国内初*1、在宅高齢者のケアマネジメントの質向上を狙い、宮崎県都城市とIoTを活用した「デジタル・ケアマネジメント」の効果検証を実施
パナソニック株式会社(以下、パナソニック)は、宮崎県都城市(以下、都城市)、一般社団法人 宮崎県介護支援専門員協会 都城・北諸県支部(以下、都城市ケアマネ協会)、及び一般社団法人 都城市北諸県郡医師会(以下、都城市医師会)と共同で、IoTモニタリング等を用いた在宅高齢者向け「デジタル・ケアマネジメント」の効果検証を実施しました。
【背景】
日本では、75歳以上高齢者の急増による要介護高齢者の増加が懸念される「2025年問題」や、あらゆる産業で働き手の激減が課題とされる「2040年問題」が予測されています。今後、要介護高齢者の在宅での暮らしを支え、被介護者のQOL(Quality of Life)向上を図るためには、限られたリソースで「ケアマネジメント*2の質向上」を行うことがますます重要になってきます。
当社は、ICT・ IoT・AI等のデジタル技術を用いて、従来のケアマネジメントを高齢者とその家族の視点からより良いものへ変えていくことを目指したコンセプト「デジタル・ケアマネジメント」を構築しました。
【効果実証の概要】
「デジタル・ケアマネジメント」の実用化を目指し、ケアマネジャー(介護支援専門員)*3向けにケアプラン作成機能*4とIoTモニタリング機能を持つソフトウェアを開発し、2019年10月より3か月間の効果検証を実施しました。
検証では、在宅高齢者向けのケアマネジメントの質向上を狙い、都城市ケアマネ協会との連携により、同市在住の要介護高齢者4名を対象に、ケアマネジャーの実際の業務において、これらの機能を活用しました。その結果、4事例全てにおいて、「本人状態が改善傾向」という評価が得られ、本人と家族のQOL向上にも効果があることが確認できました。
これにより、自立支援/重度化防止に向けた適切なケアプランと、生活実態を正確に把握するIoTモニタリングを組み合わせることによって、ケアマネジメントの質が向上する可能性が示されました。
【今後の取り組み】
本効果検証で得た実践的な知見を、当社が進めているヘルスケア・プラットフォームの構築に活かし、高齢者とその家族のQOL向上につなげるとともに、医療費・介護給付費の適正化や医療介護連携の促進という地方自治体の抱える課題解決に役立ててまいります。
【「デジタル・ケアマネジメント」のイメージ】

▼【動画】在宅高齢者向け「デジタル・ケアマネジメント」の実践事例~宮崎県都城市[Panasonic]
https://channel.panasonic.com/jp/contents/28241/
【効果検証結果(ケアマネジメントの質向上に対する評価)】
事例 | 本人の基本情報 | 3か月間の変化 | 改善傾向と評価された割合*5 | ||
---|---|---|---|---|---|
本人の状態*6 | 本人QOL*7 | 家族QOL*8 | |||
1 | 84歳、要介護1、夫婦同居 脳血管疾患、脳血管性認知症 |
排泄トラブル解消で介護負担を軽減 | 70% | 100% | 100% |
2 | 86歳、要介護1、独居 フレイル*9懸念 |
課題の発見で、当初の見立てが変わった | 24% | 56% | 78% |
3 | 83歳、要介護2、日中独居 転倒・骨折入院繰り返し |
データから本人の意欲を見つけ声掛け、調理自立へ | 50% | 94% | 50% |
4 | 86歳、要介護1、独居 MCI(軽度認知障害) |
支援機器で服薬達成率9割超え、生活の可能性を発見 | 61% | 83% | 89% |
-
*
1:自治体、ケアマネジャー職能団体および医師会が共同で、ICT・IoT・AIなどのデジタル技術を基盤とするケアマネジメントを実践し、その効果を確認した取組みとして(2020年3月26日、当社調べ)
-
*
2:利用者および家族の「自立」と「QOL向上」を目指し、的確にニーズを捉えてサービス調整を行う総合的な援助、ソーシャルワーク
-
*
3:看護師や社会福祉士などの国家資格をベースとした実務経験と試験・研修を修了し、各都道府県が認定する介護の専門職。ケアマネジメントのスペシャリストで、地域包括ケアシステムや医療介護連携の中核を担う
-
*
4:厚生労働省 老人保健健康増進等事業「適切なケアマネジメント手法の策定」の報告書に基づき独自に開発
-
*
5:地域の医療介護の専門職種代表者およびケアマネジャー(18名)による実証3か月後の状態に対する評価で、各項目に関して、「改善傾向」「維持傾向」「悪化傾向」「判断不可」の選択肢のうち、「改善傾向」を選択した人の割合
-
*
6:「本人の状態」に関して、「体調管理面」「ADL(日常生活動作)/IADL(手段的日常生活動作)面」「疾患面」の3側面で評価した平均値
-
*
7:「本人のQOL」に関して、意欲向上等の有無を評価した平均値
-
*
8:「家族のQOL」に関して、負担軽減等の有無を評価した平均値
-
*
9:健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢により心身が老い衰えた状態
【共同推進者の総評】
-
・
都城市ケアマネ協会 顧問/宮崎県介護支援専門員協会 副会長 大峯伸一氏
IoTモニタリングにより、在宅高齢者の生活が見える化でき、当初の想定以上のよい結果になりました。本人、家族、ケアマネジャーのそれぞれにメリットがありました。特に、ケアマネジャーには、生活が見えることで支援の方向性が定まりました。今後は、ケアマネジャーの育成面を含めて、実現に向けた検討を進めたいと思います。 -
・
都城市医師会 理事 瀬ノ口洋史氏
IoT機器導入をきっかけに、本人の意欲が上がることに驚きました。このデータは医療領域で役立つ可能性が大きいと感じました。今後は、データの精度向上や対象者の導入基準のルール作りが重要になるので、さらなるデータの積み重ねを期待しています。 -
・
都城市健康部介護保険課 課長 福重ひとみ氏
生活状況を、本人へのヒアリング以外に、数値で情報を集め、ケアマネジメントに展開できるのは画期的です。本人意欲の向上、さらに、ご家族とケアマネジャーの信頼関係構築といった面も効果がありました。短期間で成果に結びつけられたことも素晴らしいです。今後、事例数を増やして、システムの具現化に期待します。
【効果実証の協力先】
-
・
宮崎県 都城市(みやこのじょうし)
人口約16万人の自治体で、高齢者人口は約5万人で、高齢化率30.9%、在宅の要支援・要介護高齢者は約8千人。
http://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/index.html -
・
宮崎県介護支援専門員協会
ケアマネジャーの職能団体。県下のケアマネジャー約1,600名が会員として登録。傘下に13の支部を持ち、都城・北諸県支部はその1つで、会員は約230名。
http://www.miyazaki-cma.org/ -
・
都城市北諸県郡医師会(みやこのじょうし きたもろかたぐんいしかい)
宮崎県都城市の医師245名で構成され、地域における医療、保健、福祉に係る事業を通じて地域医療に貢献する一般社団法人。
http://www.miyazaki.med.or.jp/miyakonojo/index.html
<関連情報>
-
・
地域包括ケアシステム実現に向けた遠隔在宅ケアサポート・システムの実証実験を開始(2017年8月28日)
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2017/08/jn170828-1/jn170828-1.html -
・
NEDO「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」においてライフデータを活用した地域包括ケアシステムの実証実験を開始(2018年8月1日)
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2018/08/jn180801-1/jn180801-1.html