どのような実験を行ったのか
今回、パナソニックのAug Labでは「応援はモチベーション向上につながる」これまで漠然としてきた仮説に対して、本当に向上されているのか。どのような項目でアスリートへのパフォーマンス向上への効果があるのか、定量的に計測をすることで、応援を届けることの意義を再定義するため、東京大学、パナソニック野球部とともに共同研究を実施しました。
【共同研究概要】
目的 | 試合中におけるアスリートのパフォーマンス計測をし、応援の有無における測定項目データ分析・解析し、効果検証する。 また、バイタルセンシング解析データから応援によるチームの一体感、共感の変化を研究する。 |
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共同研究先 |
●東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 教授 東京大学スポーツ先端科学連携研究機構 機構長 中澤公考教授 |
●パナソニック野球部: 1950年に創設され、本拠地を枚方市におく、日本野球連盟加盟の硬式野球部 |
共同研究先として、東京大学ではスポーツサイエンスやニューロリハビリテーションなどの分野で多岐に渡る研究を実施されている中澤公考教授とともに推進してきました。また、実験をする上で必要なアスリートのパフォーマンス計測をするためにパナソニック野球部と共に、練習試合の中で選手の状態を計測しました。
【実験概要】
対象者 |
①選手 10名 ※パナソニック野球部 ②応援者 10名 |
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実施場所 | 大阪府枚方市・パナソニック ベースボールスタジアム |
実施日時 | 2021年8月5日(木曜) 練習試合 |
測定機器 |
・選手用、応援者用ウェアラブルセンサー:心拍数、呼吸、身体加速度 ・ピッチャー用投球スピードガン:投球スピード ・ピッチャー用カメラ、PC:ボール速度、回転数、軌道その他 |
測定方法 |
・応援者は選手からは見えないバックネット裏の控室から実際の試合を観ながら応援を実施 ・控室の応援の声をCHEERPHONE(チアホン)を使い、スピーカーを通して試合会場へ届ける ・応援をするイニングと応援をしないイニングを交互に繰り返し、アスリートのパフォーマンス計測を実施 |
2021年8月の練習試合にて、選手と応援者それぞれがバイタル計測デバイスを着用し、ピッチャーの投球スピードや回転数、軌道等も同時に計測しました。
応援者については選手からは見えないバックネット裏の控室から試合を観ながら応援をするイニングと応援をしないイニングを交互に繰り返し、その声援をCHEERPHONE(チアホン)を使い、スピーカーを通して試合会場へ届けました。
【構成図】
応援はどのようにアスリートのパフォーマンスに影響を与えるのか
選手や応援者含め色々な項目にてデータ測定し分析した結果、一番顕著な数値が出たのはピッチャーの投球の軌道でした。パナソニック野球部と相手チームのピッチャーと、応援有のイニングとなしのイニングを比較しました。
【投球位置(pitch location)の調べ方】
キャッチャーが構えた位置と捕球した位置を映像上でデジタイズ
上記のように映像で投球位置をデジタイズし、投球位置のバラつきから投手の制球力(投球コントロール)を評価しました。
具体的には、誤差の分析として、ミットの位置に対して投球がどれくらい変動していたか(variable error=変動誤差)を応援なし(イニング表)、応援なし(イニング裏)、応援あり(イニング表)、応援あり(イニング裏)それぞれで算出して比較しました。
パナソニック野球部投手の投球のバラつき
※VE (variable error) ミットの位置に対して投球がどれくらい変動していたか
味方の声援が入ることで、パナソニックのピッチャーはピッチングの精度が平均で35%向上するという驚きの結果となりました。
今回の実験から、姿が見えないリモートからの応援でも、アスリートにとって応援は力となっていることが証明される、1つのデータとなったのではないでしょうか。
パナソニックとしては今後もアスリートと応援者の関係性を研究していき、新たな技術開発や新しい事業やサービスの創出を目指します。よりアスリートがパフォーマンスを発揮できる環境づくりや、新しいスポーツの楽しみ方の提案を通して、より多くの人がスポーツを楽しめる社会へ貢献します。
【協力:パナソニック野球部】
公式サイト:https://panasonic.co.jp/sports/baseball/
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