パナソニックと、奈良先端科学技術大学院大学、立命館大学との合同チーム「NAIST-RITS-Panasonic」は、9月9日から12日まで愛知県のAichi Sky Expoで開催されたWorld Robot Summit 2020 (以下、WRS)のフューチャーコンビニエンスストアチャレンジに参加し、総合優勝を獲得した。WRSは昨年に本大会が開かれる予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により延期となり、今年の開催となった。結果は以下の通り。
●フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ 総合優勝(経済産業大臣賞)
● 同上 <陳列・廃棄タスク>1位(NEDO理事長賞)
● 同上 <清掃タスク>1位(NEDO理事長賞)
WRSは、経済産業省とNEDOが主催するロボットの国際大会であり、フューチャーコンビニエンスストアチャレンジは、ロボットがサービスを提供する未来のコンビニの実現を目的とした部門である。競技は、「陳列・廃棄」「接客」「清掃」の3つのタスクに分かれており、それぞれコンビニエンスストアで日常行われている業務をロボットで行い、その正確性などを競った。
パナソニックは、ロボティクス技術者育成と先端技術開発を目的とし、2018年に行われたプレ大会、2019年に行われたトライアル大会に引き続き、合同チームで3つのタスク全てに参加した。パナソニックのメンバーは、全社公募に応じて参加した若手メンバーが中心となり、大学のメンバーと一体となって、難しい課題に挑んだ。
競技に参加したロボットは、マニュファクチャリングイノベーション本部および参加したメンバーで独自に開発した。
■陳列・廃棄タスク向けロボット:
ロボティックモビリティをベースとし、協働ロボットと独自のロボットハンドを備えている。アーム先端およびロボット前部のカメラによって、陳列棚と商品(おにぎり、サンドイッチ等)の位置を検出して、ピック&プレースを行う。2019年のロボットと比べて、タスクの遂行速度を大幅に向上させた。
■清掃タスク向けロボット:
全方向移動台車をベースとして、協働ロボットとツールチェンジャーを備えており、3種類のツールを切り替えながら清掃することができる。アーム先端及びロボット前部のカメラによって、ゴミ(トイレットペーパー&芯、コーヒーカップ)をAIによって認識する。2019年のロボットから一新した。
■接客タスク向けロボット:
トヨタ自動車の研究用ロボットをベースとし、AI技術により買い物かごや商品の位置を認識して把持することができる。Afterコロナにおける非接触買い物体験を提案した。
3つのタスクで競技を行い、陳列・廃棄タスク、清掃タスクで見事1位を獲得した。最終日には、エキシビションとして1位のチームが再度デモンストレーションを行い、NAIST-RITS-Panasonicはほぼ完璧と言えるデモンストレーションを披露した。
チームのリーダーおよびメンバーのコメント
・マニュファクチャリングイノベーション本部 ロボティクス推進室 山本正樹(リーダー)
大会当日、参加できなかった若手メンバーも含め、パナソニックメンバーはほんとうによく頑張っていただきました。社外のチームに自ら飛び込むことで、貴重な経験をされたと思います。WRSは東京オリンピックと同年開催として企画された大会であり、今回で一段落となります。
そこで、これまでの4年間の技術ノウハウをRobotics HUBを介して全社で共有して行く予定です。また、チームに実地参加することは、技術だけでなく、国際コミュニケーションやチームマネジメントを体験する貴重な機会です。WRS後も、大学側と協議しながら、あらたな挑戦の場を作っていきたいと考えています
・マニュファクチャリングイノベーション本部 ロボティクス推進室 若山達大(清掃タスク向けロボット・ソフトウェア開発を担当)
ロボットやAIの開発スキル向上を目的に参加させていただきました。チームメンバーと連携を取りながら開発を進め、ハードソフト共に日々完成度を高めていくことができました。また、大会会場で急遽生じた課題にも円滑に対応することができました。
WRSへの挑戦を通じて、ロボットやAIの開発スキルが向上したと共に、チーム開発の進め方など多くのことを学ばせていただきました。この経験を今後の業務に活かしていきたいと思います。
・インダストリー社 産業デバイス事業部 藤浦絵梨(画像処理・AIソフトウェア開発を担当)
これからのモノづくりにおいて、ロボット活用のスキルはきっと役に立つと思い参加を決意しました。コロナ禍での開発はやりづらく感じることもありましたが、チームの支えもありどうにかやりきることができました。結果、大会本番で良い成績を収めることができ大変嬉しく思います。
RobotOSを用いたビジョンシステム活用のノウハウや、AIの癖などを学べて技術者としても成長できたと思います。事業部での生産技術の仕事にも活かしていきたいです。
・コネクティッドソリューションズ社 イノベーションセンター 久郷紀之(アーム制御ソフトウェア開発を担当)
今回のWRSチャレンジには自身が職場で扱っているロボティクス技術のベンチマークを行いたい、やるからには1番を取りたい、との思いでこのチームに参加しました。開発ではアーム動作の高速化と安定性の向上の2点の開発に着手、一発勝負の本番でも正確かつ素早くスコアを稼ぐことが出来るよう他メンバーとも連携しながら連日の調整を行った結果1位を取ることが出来ました。
今回の大会で経験した度重なる困難を一つ一つ分析し解決した経験を生かし、今後の業務にも生かしていきたいと思います。
Robotics HUBでは、今後も若手技術者の技術向上の機会を提供するとともに、今回開発した技術を社内展開し、開発加速・事業創出に貢献すべく、活動をしていく。
関連リンク (画像引用元):
World Robot Summit(ワールドロボットサミット)https://wrs.nedo.go.jp/
デモンストレーション動画(エキシビション)
陳列廃棄タスク https://youtu.be/af8bbm8xF90?t=2952
トイレ清掃タスク https://youtu.be/af8bbm8xF90?t=4573
Robotics HUB
https://tech.panasonic.com/jp/robot/