人間が人間らしく生きること
人間を支援する機械を作っていると、人間の神秘性やすごさを感じることが多いという安藤。人間が人間らしく生きることは素晴らしいことでもあり、もっとも重要なテーマだと考えている。そのためには「Well-being」という状態をいかに保っていけるのかがポイントになるという。できることなら、死ぬまで自分の足で歩き、食べて、寝て、トイレにも行きたい。しかし、それが難しいこともしばしばある中で、「Automation」(自動化)で解決できることもたくさんある。楽にはなるが、それで人の暮らしはよくなるのか。GDPは上がっているけれど、満足度が上がっていない状況は果たして幸せと言えるのだろうか。人間の暮らし、命をどう整えるのか。ロボティクスとしてやるべきことは、人が人としてやる当たり前のことを、最後の最後までできるようにすることが最大のミッションだと考えている。
ロボティクスの2つの役割
ロボティクスが果たしていく役割は2つある。1つ目は生産労働人口が減少する中で発生する人手不足問題を解決すること。2つ目は人生を幸せに生きる、「Well-being」することだ。
高度経済成長時代には、ロボットは生産性を上げる道具として使われていた。その後はロボットは、パートナーという形で使われるようになる。そして人生100年時代の今、自分自身の能力だけではカバーしきれない部分が出ることは避けられない。「自己拡張、「Augmentation」という価値観を探索していきたい」と語る安藤は、拡張においても2つの視点があるとし、1つは物理的に力やスピードを拡張・増強する意味での量的な拡張「Enlarge」という分野、もう1つは人間の感情的な部分、うれしいや悲しいという感情を離れていても感じられる、共有できるような質的拡張と呼ばれる「Enrich」という分野に分けたアプローチを視野に入れている。
パナソニックのDNA
「人間が人間らしく」を考えるとき、人に接するものを100年かけて作り続けてきたパナソニックがこれまで培ってきたDNAが力を発揮する。これまでは工場の中にいたロボットが、外へ飛び出し人の暮らしの中に入っていく。パナソニックの強みは、ロボットだけでなく、家電作りの中で蓄積してきた「安全技術」「快適技術」を軸に、多彩な技術群と設計哲学だという。世の中の安全は技術的に安全と安心がセットとなって考えられる。パナソニックの「安全技術」の強みは、「この条件下でこういう(機能が可能)ものなら安心」というものを社会的に作り上げてきたこと。と同時に、お客様のいう安心の領域に「技術的にチャレンジしていくこと」を培ってきた。
ロボティクスHub構築の3つの取り組み
Robotics HUB(ロボティクスHUB)は「きっかけになる場」だと説明する安藤。構築の目的は、革新的なロボティクスを高速に生み出す“共創の場”を作ることだったという。
幸いにもたくさんの人がロボットに注目してくれる機会がある中で本当に役立つものを早く作って世の中に提示していきたい。そのためのきっかけの場がロボティクスHUBなのだ。ロボティクスHUBの構築取り組みには3つの柱がある。1つは、すぐに動かし評価し合い共創できる環境の整備と提供だ。具体的には、リアルに社内外の人が集まれる場所を創っている。2つ目は、社内外のロボティクス技術をもとにプラットフォームを構築・提供すること。技術の棚卸・整理を行うことで、さまざまな方法が使えるような環境設備を生み出している。3つ目はアジャルな事業創出。ロボティクス開発高速化への貢献を目指しラピッドなマニュファクチュアリングやプロトタイピングの機能、さらに技術者だけでなく営業などのニーズとのマッチング、ニーズシーズマッチングやリスクアセスメント、人材育成サービスの提供に取り組んでいる。ロボティクスHUBにおいて重要なことは「ニーズからの問題解決を大黒柱に、産学連携すること」とし、ちょっと尖った技術にも積極的に挑戦していくことも大事だと考えている。
本記事は、Robotics Hub安藤健氏インタビュー ~人間が人間らしく生きていくために~動画を元に作成しております。動画をご覧になりたい方はこちら。