2019/8/27

Robotics HUBは、はじまりの場所

【WHILL×Panasonic】ロボティクス技術者クロストーク
Robotics HUBは、はじまりの場所 Robotics HUBは、はじまりの場所

(左):今岡紀章氏(パナソニック株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部ロボティクス推進室 主任技師)
(中):上松弘幸氏(パナソニック株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部ロボティクス推進室 主任技師)
(右):白井一充氏(WHILL株式会社 システム開発部 部長)

*撮影日:2018年11月20日

「全ての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに掲げ、パーソナルモビリティの開発に携わるWHILL株式会社システム開発部部長白井一充氏と、マニュファクチャリングイノベーション本部ロボティクス推進室の上松弘幸、今岡紀章の3人のロボティクス技術者によるクロストークを実施。共創することの強み、ロボット開発の意義、そしてRobotics HUBの位置付けについて語ってもらった。

“共創”には、強みがある

Q. 共創することになったきっかけは?

白井:もともとパナソニックさんとはパラリンピック関連プロジェクトで関わりがあったんですが、「もっと全社的に弊社とパナソニックがコラボレーションしよう」という話がありました。そのタイミングでHOSPI(自律移動ロボット)をやっている方々から、次のプロジェクトとして弊社のWHILLとHOSPIの技術を使い自動運転して新しいパーソナルモビリティを作ろうと思ったのがプロジェクトの始まりかなと思います。

インタビュー風景

上松:WHILLさんがかなり特徴的なデザインの車椅子を創っていて、そこに先進性やオート技術を組み合わせたら“未来感”があるなと将来の可能性を感じました。

今岡:移動をサポートするという観点でいくと、足が悪い方とかに目が行きますが、電動車椅子を自動化というところに落ち着かず、もっとより視野を広げて、健常者にもサービスが提供できることを考えたときに、ネガティブな視点が見えてしまいがちな部分をWHILLさんはデザインでポジティブに見せているという視点が“パナソニックと合っている”と思いました。

白井:弊社は「全ての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに掲げ、パーソナルモビリティという新しい乗り物ですべての人に利用していただけるような世界を作って行きたいと考えています。なので、パナソニックさんにそこを理解していただき、一緒に仕事ができることはすごく大きいと思っています。

Q. コラボレーションによる双方のメリットは?

上松:一番楽しいと感じているのはWHILLさんならではの強みを、我々がどう活かしながらやっていくかを考えながら、一番いい商品になると感じられる部分です。WHILLさんは我々にはできないスピード感でやっているので、「ついていかなくてはいけない」といい意味で刺激をもらっています。

今岡:WHILLさんのデザインを崩さないように、弊社のものをつけていくことにはとても気をつかっています。細部を見ていくと「よく考えられているな」と感じますし、いろいろな人に使ってもらいたいという“想い”が伝わってきます。例えば、制御の部分も一緒にやらせてもらっていますが、「急加速しない」などちゃんと動き方を考えて制御しているところは、参考にさせてもらっています。

白井:すごく細かいところを見ていただいています。弊社にとってもそれはすごく良いことでもあります。パナソニックさんと一緒にやることのメリットは安全面の考え方がとても勉強になるという点です。より安全を高めることが、エンジニアとして気づきになっています。もらったリクエストにはできるだけ早く応えられるように頑張っています。スピード感は社内でとても大事にしています。パナソニックさんは、面白いって思うくらい細かいリクエストがあるのですが(笑)。すべてのやり取りが丁寧で、Face to Faceのミーティングをとても大事にされているのを感じます。特に初期の頃は、ソフトウェアの中身を一緒に見ながらレビューしたことが、お互いのプロジェクトに齟齬がない状態で進められた理由だと思っています。

今岡:困ったときにWHILLを運んで一緒に見てもらったりしましたね。すぐになんでも用意してくれるので本当に助かります。

白井:我々はものを作っているので、実際に見ないとわからないですよね。すぐにフィードバックできたのもスムーズに進められた要因だと思います。

Q. 共創の成果を高めるために必要なものとは?

上松:現場目線でいうと、パナソニックは、今までやってきた文化、歴史、遺産を活かして商品開発をすることが強みの会社でした。コラボレーションでは他社の文化も合わせることが大切です。現場レベルではそのすり合わせができても、会社レベルとなると難しさを感じることもあります。

白井:リーダー的視点だと思います。

今岡:現状、私たちからの問い合わせが全部白井さんに行ってしまっている部分があります。窓口としてはそれでも良いと思うのですが、白井さんの専門は制御なので、メカの相談をするのは如何なものかと感じることもしばしばあります。担当間のコミュニケーションがあると、やりとりがしやすくなるのかなと思っています。

上松:現場レベルでは、会社間で発生する責任範囲などを超えた、違いが手を出せる環境や仕組みがあるといいなと思います。他社さんと一緒にできる場所を作る活動はとても大事だと感じています。

白井:とりあえずやってみようという考え方は、オープンイノベーションではとても重要です。 WHILLのようなスタートアップだと「何かちゃんと作ろう」という思いがないとやっていけません。そういう意味で、「まずやってみよう」というチャレンジする環境があれば、全てがうまくいくわけではないけれど、いつかは大きいイノベーションになっていくことが期待できるのかなと思います。

ロボット開発を、もっとおもしろく

Q. ロボット開発に惹かれる理由を教えてください。

今岡:自分が作ったもので「おぉ、すごい!」みたいに驚かせたいという気持ちがあります。それが役に立つものであればなお良いですし、だからこそ、広がっていくのだと思います。商品となると落ち着かせる方向になってきますが、私自身はその一歩超えたところを目指してやっていきたいと考えています。

インタビュー風景

上松:世の中の本当に困っている人、本当に使えるところに“いち早く”どうやって持っていくかを気にかけています。本当に使ってもらったうえで、声を聞くというプロセスを私は本当に楽しく感じています。“いろいろな想い”を持った人が“いろいろなこだわり”を持って技術を組み合わせてロボットを作っていく。ただ作るのではなく、できるだけ“ちゃんと使える形”に仕上げて、やりたかったことを認めてもらいつつ、早く社会に持っていきたいと思っています。

白井:作ったものは世の中に出ないと意味がないと思っています。実用化や世に出すことをちゃんと目標として持てることがとても大事です。そう行った意味でも、パナソニックさんとのプロジェクトは、実用化まで目指して走っている点も含めて、私自身そしてWHILLとも相性がいいと実感しています。

Q. パーソナルモビリティを開発する面白さは?

白井:自分が作ったものが社会にインパクトを与えることを大事に考えています。WHILLで新しい領域にチャレンジできているのを楽しいと感じています。また、ものを作ることでお客様の声をダイレクトに聞くことができ、お客様の人生をポジティブにしていると実感できることも多くあります。「ウィルを買ってから外出する機会が増えた」「移動することでいろいろな人に会えた」という声を聞くことができるのは、パーソナルモビリティを作っているおもしろさに繋がっています。

今岡:私はもともと趣向的に動くものを作るのが好きで、自動車会社で働いていたこともありました。そこでは一部分の設計のみを担当していたのですが、私が本当にやりたかったのは、全体的に動くものを一から作り上げることでした。乗り物は作るだけでなく乗るのも好きなので、パナソニックの中では一番ウィルに乗らせてもらっていると思います。本当に運転しやすく、ジョイスティックの操作もしやすい。自分が作った自動停止をウィルに乗って実際に試すことができるのは、モチベーションにもなっています。

上松:入社以来、世の中のいろいろな方が生活やすいようにできれば良いという思いで、私自身は10年以上ロボットをやってきたのですが、なかなか事業にならず難しさを感じていました。障害者の方だけでなく、健常者の方も便利になればいいなと思ってきましたが、今回のプロジェクトはまさにその想いと合致しています。ウィルネクストは今回空港をターゲットにしていますが、これをフックに社会のいろいろなところに広がっていけば良いと思っています。いろいろな方にとってフレンドリーな環境ができることは魅力的ですし、私たちがやるべきことだと思っています。それぞれが思っているところは少しずつ違ったりしても、大きな意味では似たようなところに向かっている、そんなところがこのプロジェクトの一番楽しいところでもあり、意味があると感じる点です。

Robotics HUBから、はじまる

Q. Robotics HUBのようなコミュニティがPanasonicの中でどんな位置付けになっていくのでしょうか?

上松:「商品の開発といえば、こういう場所から始まるよね」と、当然のようになれば良いなと思います。社内でこんなコア技術があってどうしよう」みたいなものを「とりあえずHUBに持っていって考えよう」。Robotics HUBからはじまるとなっていく。パナソニックも変わるかなとは思いますし、世の中的にもインパクトがあるのかなとも思います。何より自分が一番楽しいと感じています。

インタビュー風景

今岡:まず大事なのは知ってもらうこと。ファーストステップとして、お互いの考えや想いが出し合える場所だと思います。パナソニックという会社は大きすぎてどこに(相談しに)行ったらいいか分からない。そんなときにこういう場所はわかりやすくて良いかなと。作ってもらう人と一緒にやるのもあるし、お客さんになって欲しい人を連れてくるのもあるかもしれません。一技術者でゼロからやろうと思うととても大変です。だからこそ、ここに来ればできるという、人を吸い寄せ安い環境にできたらいいなと思っています。

白井:パナソニックさんと一緒にアイデアを気軽に出し合える場所というのはすごく良いと思います。「まずやってみよう。プロトタイプでもいいから」という感じで進めていけるのはありがたいです。

今岡:重苦しい会議をやるよりは、デモができる場所とか自分で動かせる場所、実際に目でものを見るのが一番理解しやすいし、発想が湧きやすいですしね。おもしろさや、相手の熱意が伝わってくること、楽しそうと感じるものをまずやってみる、あまり重苦しく考えないほうがやりやすいです。

白井:下準備をしてゼロから一緒に作り出すだけでなく、まずは今あるものでコラボレーションしてみようというのを第一歩にしていく、そういう場所だと外部とパナソニックがもっと一緒にいろいろなことができるんじゃないかなと思っています。

本記事は【WHILL×Panasonic】ロボティクス技術者クロストーク動画を元に作成しております。動画をご覧になりたい方はこちら