「これから大事になるのは人の感性と感性を理解するためのデータ」

(「Aug Lab」単独インタビュー)
「これから大事になるのは人の感性と感性を理解するためのデータ」 「これから大事になるのは人の感性と感性を理解するためのデータ」

パナソニック株式会社マニュファクチャリングイノベーション本部 本部長 小原英夫

2019年4月の発足から3年目を迎える「Aug Lab」。パナソニックがこれまで培ってきたロボティクス技術を従来の活用法である自動化「Automation」だけでなく、新たな取り組み領域「Augmentation(自己拡張)」にも活用する取組みをスタートさせ、オープンラボ活動も推進してきた。2年間の活動を通じて、いくつかのプロトタイプを世に打ち出してきた。今回はマニュファクチュアリングイノベーション本部(以下、MI本部)の本部長の小原に「Aug Lab」の活動内容についての想い、今後の期待、人そして社会のテクノロジーとの関係について語ってもらった。

―― 「Aug Lab」の活動をどのように受け止めていますか?

小原:実際にアウトプットを見る中で、感性の理解に必要なものは何かという着想のもと、そのアプローチや取り組みの結果が見えてきている段階だと感じています。私たちとしては、ロボティクス技術の領域においても感性価値をやらなければいけないと考えています。過去に別の部門を担当していた時代から、感性価値には着目していました。次の技術、現場に即したソリューションを考えたとき、センシングの観点からも感性価値の理解は必要だと思います

―― 人と人との関係性、つながりそのものを変えていくために、パナソニックは何をすべきだと思いますか?

小原:ターゲット次第ではありますが、関係性の理解が重要だと考えます。人間の感性について、生体メカニズムに基づいて真っ向勝負するには、まだまだ時間がかかると感じています。人の感性を理解するときのキーとなるのはデータです。事業に即した形で取れるセンシング情報には限界がありますが、取れる情報から何が語れるのか、データの積み上げが今後の差別化の重要な要素になると思います。だからこそ、多くのデータを扱い、どの様にそれを理解するのかのナレッジを深めていくことで、理想的な成果に到達できると思います。

―― MI本部としてロボット分野の研究開発に期待していることはありますか?

小原:はい、あります。ロボット作りをしていると、モノづくりが楽しいし、考え方がモノ寄りになりがちだけど、これからはモノだけではすぐに陳腐化してしまいます。人との関係性の研究で蓄積されるデータを活用し、そこから見えてきたアクチュエーションに関するナレッジ、アナログ的要素をデータやソフトにして入れ込んだロボットにしないと、あっという間に同質化競争になってしまいます。他社のハード技術の進化も早いので、差別化のためには、ロボット技術はデータ活用とセットで進めることが、重要だと考えています。
ハード×ソフト、もっと言えば、ハード×データナレッジが非常に重要になってくると考えています。

対談風景

―― 社会とテクノロジー、人とテクノロジーの関係はどのようになっていくと考えますか?

小原:「テクノロジーは限界だ」という人もいれば「テクノロジーは無限である」という人もいます。1つの領域ごとに見ると進化はだいぶ止まっていると感じています。しかし、組み合わせの余地はまだまだあると思うし、あると信じたいです。この分野で飯を食ってきたプロフェッショナルとして、テクノロジーとの掛け合わせの中で、良い社会づくりに貢献していきたいと思っています。

対談風景

―― 最後に「Aug Lab」に期待することをお願いします。

小原:これまでのアウトプットを見て感じたことですが、ここでもデータは大事だと考えています。人間の心は移ろいやすいので、そのときどきで趣味や嗜好も変わります。それに追随していく仕掛けなどがひょっとしたら必要なのかもしれません。それをハードウェアだけで実現するのは大変です。ソフトや映像など何らかのオプションをつけて、アップデートする。そういったベース機能を持っていれば、AutomationとAugmentationとのクロスポイントが見つかると思います。