「私たちのWell-being」という当事者意識の高さがプロジェクトの鍵!

(「Aug Lab」特別対談・後編)
「私たちのWell-being」という当事者意識の高さがプロジェクトの鍵! 「私たちのWell-being」という当事者意識の高さがプロジェクトの鍵!

語り手(右):太田直樹 氏(株式会社New Stories 代表)聞き手(左):安藤健 氏「Aug Lab」リーダー (パナソニック株式会社マニュファクチャリングイノベーション本部 ロボティクス推進室 課長)

パナソニックの「Aug Lab」を立ち上げたLabリーダーの安藤と、挑戦する地方都市を「生きたラボ」として、行政、企業、大学、ソーシャルビジネスを越境し、未来をプロトタイピングすることを企画・経営する株式会社New Stories代表の太田氏による特別対談。後編では、「Augmentation(自己拡張)」で解決したい課題、解決するために必要なこと、太田氏が考えるパナソニックそして「Aug Lab」に期待することについて伺った。

安藤:太田さんは国の仕事にも数多く携わって来た方なので、国だからできること、民間だからできることもよくご存知かと思います。せっかくの機会なので、Well-beingに関してパナソニックだから取れる戦略やできることにはどんなことがあるのかを伺っても宜しいでしょうか?

太田:課題設定においてグローバルで共感されることを意識することが大切だと思っています。例えば「孤独」です。2018年に話題になったイギリスの孤独担当大臣は、イギリス社会で「孤独」に困っている人のための総合的な政策を率いるというポストでした。「孤独」が国に与える経済損出の話はとても大きく、そのあたりで何か提案できたらと思っています。

対談風景

「孤独」を解消するために「出社したらこれをやって」なんて言われら怖いですよね(笑)。あくまでもボールはユーザー(自分)が握っている形で暮らしの中で提案できるのであれば、面白いと思います。より一般的に言えば、ソーシャルグッドとビジネスは、過去は重なっていて、この30年くらいの間にぐっと離れて、いま再び重なり始めているのだと思います。

安藤:そこは、いままであまりパナソニックが向き合っていない課題かなと、私自身は思っています。見守りはしていても、本当にその人の「孤独」の本質をとなると難しい問題ですよね。

太田:暮らしへの実装方法としては、解消してあげることが良いことなのか、ネガティブをなくすことが良いことなのかと考えると、答えは難しいですよね。サイエンスとエンジニアリングだけでなく、デザインやアートといった要素が統合された知恵が必要だなと思います。

安藤:テーマを孤独としたときに、それを解決するためには入口はどこにするのが良いのでしょうか? テクノロジーで孤独などの問題を解決し、Well-beingにつなげることは可能なのでしょうか?

太田:私がやっていることで言うと、ひとつは「空間」の再発明ですね。都市集中というのは、日本だけでなく、世界中で進んでいますが、経済合理性が高いものの、孤独が進み、幸福度は下がってしまう。都市集中に対する代替案をつくろうという「風の谷を創る」という運動を濃いメンバーと進めています。

安藤:それはすごくおもしろいですね。

対談風景

太田:建物、エネルギー、水、道路などのリアル空間を、サイバー空間と合わせて再発明する。100年はかかると思ってやっていますが(笑)。もう一つは、Well-beingの要素の一つの「関係性」ですね。特に、パナソニックと一緒に進めているプロジェクトでは、一人称の(私の)Well-beingに加えて、「私たちのWell-being」に未来の暮らしの可能性を感じていて、孤独の課題解決にもつながってくると思います。

安藤:「関係性」ですね。なるほどです。今回、会津若松でファシリテートして頂いたWell-beingをテーマとしたワークショップの中でも「関係性」というのが1つ重要なキーワードとしてあったかと思います。このような活動をパナソニックと一緒にやろうと思っていただけた理由を教えていただけますか?

太田:パナソニックの社会へのコミットメントという点で共感できたことが大きいですね。松下幸之助氏が提唱した水道哲学をはじめとして、世の中のためになることを真面目にやって来た会社だし、社員の方々もそこに向かって真面目に取り組んでいるところが好きなんです。社会に向き合って行く姿勢がすごくいいなと。

安藤:「水道哲学」の水道にあたるものが、今はデータのようなものになっていると思います。データを使って隅々まで個人のくらしや社会を良くすることに、現状、対応しきれてはいないのですが……。

対談風景

太田:サイバー空間が広がる中で、リアル空間との境目がなくなって来ています。リアル空間には、みんなの共有地についてのルールがありますが、サイバー空間は限られた企業が独占しているのが現状だと思います。デジタル化が進む中で、デジタルにおける共有地的なものが何なのかを定義して行く時代になっていると思います。それが基盤となって「私たちのWell-being」のサービスが生まれるということが、プロトタイピングから見えてきました。そこをやるマインドを持っている企業がパナソニックかなと期待もしています。

安藤:民間企業だから求められるものはあると思いますか? パブリック的なことをやっていくなかでも、当然ビジネス的なことも考えて行かなければいけないと思っています。

太田:あると思います。大切なのは、偉い人たちが集まってルールを決めてはいけないということです。「こういう風にしたいよね」という意思を持った人が集まって決めるものだと思っています。個人でもこうありたいという意思を持って作っていった集積が会社というひとつの形になることが大切ですし、そうあってほしいと思います。会社の考えだからそうしよう、ではなく、自分自身がこうありたいからという意識が大切かなと。自分を持ちながら、会社ともバランスをとってビジネスとしてやっていかないと。難しいことではあるんですけどね。

安藤:主が私であり、私たちであること。当事者であることを意識する必要はありますね。「Aug Lab」のメンバーには「覚悟を持って人と向き合おう」という考えを共有しています。

太田:「私たちのWell-being」という高いモチベーションで動いている人がたくさんいるプロジェクトですね。期待しています。

安藤:ありがとうございます。本日は、ありがとうございました。