世界には「真の不規則」が必要だ。

「Aug Lab」の共創先として、新たに「Augmentation」の価値探求の仲間に加わることになった株式会社コネル（Konel, Inc.）(以下、Konel)。2011年創業のKonelは、多様な分野のプロフェッショナルが集まり、「欲望を形にする」クリエイティブカンパニーである。出村氏によると「Aug Lab」の共同研究の公募があることを知ったのは締切の1週間前というタイミング。実際に「Aug Lab」の活動について話を聞いてみると「Konelが興味を持っている分野とオーバーラップする部分が多い」と強く共感したそう。
共同創業者である、出村氏と荻野氏に応募に至った経緯、パナソニックとの“共創”で期待すること、Konelが目指すものについて伺った。

「不」は人間のバイタリティを拡張する。

「社会が便利になりすぎて、世の中から“不”が消えていくことに焦燥感を抱いている」と出村氏は語る。人間は不便がなくなると工夫をしなくなり、不条理なことがなくなれば何かを疑問視しなくなり、不意をつかれることにすらびっくりしなくなる。そのような状況下では、創造性や活力、突拍子も無いような思いつきなど、人間としてのバイタリティが低下する懸念があると感じたそうだ。

過度に便利になった現代社会において人々は、移動中はもちろん、トイレの中でさえもコミュニケーションをとり、常に何かのインターフェースに囲まれて、「ぼーっと」する暇もなく過ごしている。現代人は「ぼーっと」しにくい環境に生きているのだが、そこに違和感があった。
非生産的な行為に思えるが、「ぼーっと」している最中に、何かを思いついたり、決断したり、思い出し笑いをしたり、予定外にバイタリティが引き上がることは、誰しもが経験したことがあるはずだ。ロボットやAIには真似できない、人間だからこその行為であることに注目し、「ぼーっと」するための道具を生み出すことに向き合い始めている。

例えば、焚き火という真に不規則な現象は、人を「ぼーっと」させてくれる。焚火という行為は、思考が整い、活力が充電できるため、忙しい現代人にも人気だ。しかし、毎日焚き火を囲むことは現実的には難しい。VRなどのデジタル技術で再現はできるが、「不規則のコピーは手に入りやすいけれど、体験の質に限界がある」と指摘する。Konelは、焚き火のような真の不規則から生まれる体験価値を提供するために「ランダム家電」のR&Dに取り組んでいる。すでに、その第１弾であるNASAの提供する落雷観測データと繋がる「LIGHTING BALL（雷玉）」は、２０１９年のSXSW(※1)でも公開されている。「Aug Lab」では、次なるランダム家電の企画を検討中だという。「バイタリティ、活力が拡張する、つまりは人間の機能が引き出される。これこそ、人間拡張そのものでもあり、「Aug Lab」が目指すものと交差する。」とワクワクしているそうだ。

パナソニックに期待するのは、「家電屋としてのプロフェッショナリズム」

「パナソニックとの共創で期待することは、「家電屋としてのプロジェッショなリズム」だという。アイディアを素早く形にすることについては長けている自負があるというKonelだが、安全性や耐久性についてはパナソニックからフィードバックをもらいながら進めていくことに大きな期待を寄せているようだ。また、「世界に1台しかないものや美術館に置くものを作るわけではない。パナソニックとの共創することによって、量産できるものを作りたい。数万円払えば買えるものでありつつ、ある程度の嗜好品であることを意識しながら形にしていきたい。」という。

「便利なものよりも、驚きや感動を生むモノづくりがしたい」と力強く語り、インタビューは締めくくられた。

＊今後のコネル社との共同研究の進捗は、「Aug Lab」ウェブサイトでも紹介をしてまいります。

※1：サウス・バイ・サウスウエスト（英語：South by Southwest、略記：SXSW）は、毎年3月にアメリカ合衆国テキサス州オースティンで行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント。

【会社概要】
株式会社コネル（Konel, Inc.）
“欲望を形に。／Shaping desire.”を合言葉に、デザインとテクノロジーのスキルを駆使して、アート、広告、プロダクト開発など様々なフィールドでの制作活動に取り組んでいる多国籍なクリエイティブカンパニー。
https://konel.jp/