空想からはじまる隣人関係。
門真市のこれからをともに考える「未来空想新聞」【5月monthly open circle】
古来より、本や雑誌、新聞といったメディアは市井の人々にさまざまな視点を提供し、千思万考の機会を創出してきました。近年においてはインターネットの発展により、ブログやSNSといった新たなメディアが誕生。一方通行の情報提供だけでなく、共通の興味関心を持った人々がつながるコミュニティ機能も強化されています。
コミュニティを育み、イデオロギーを形成し、良くも悪くも世の中を大きく動かしてきたメディア。この機能を活用することで、多様な人々が垣根を超えてつながり、対話を通じてより良い未来を実現しようとする取り組みが「未来空想新聞」です。
パナソニックグループと朝日新聞社の共創プロジェクトである同企画は、毎年5月5日を、「こどもの日は、未来を考える日。」とし、5年間にわたって未来空想新聞を発行してきました。
2026年5月のmonthly open circleでは、「空想から、はじめよう。」をイベントテーマに据え、地域の未来における「未来空想新聞」の可能性についてパネルトークを実施。その後のワークショップにて、未来における自分の価値観や街、社会のあり方が話し合われました。本稿では当日の様子を余すことなくお伝えします。
イベント詳細
公民連携まちづくりプラットフォーム「KKPC」から生まれた、月例の対話型イベント。パナソニックHDのTechnology CUBEを拠点とする「base」と、門真市立文化創造図書館KADOMADOで地域へ開く「field」の二つの場から構成されており、それぞれを循環させることで新たな問いや気づきを創出。多様な人が未来づくりの“隣人”としてつながる、学びと対話の場を設けています。
登壇者(パネラー)紹介
姜 花瑛(Kang Hwayoung)
パナソニック ホールディングス株式会社
ブランド・コミュニケーション戦略グループ
ブランド戦略部 クリエイティブユニット
リードデザイナー/デザインエディター
濱田 翼(Hamada Tsubasa)
門真市役所
市民文化部生涯学習課
主任
岸本 雄(Kishimoto Yuu)
京阪ホールディングス株式会社
阿部 透子(Abe Touko)
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
門真市プロジェクト
広報
これからの未来を問い、ともに描く媒体「未来空想新聞」
公民連系まちづくりプラットフォーム「KKPC」から生まれた、目的のない会議「monthly open circle(moc)」。記念すべき第一回はカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下「CCC」)が運営する門真市文化創造図書館「KADOMADO」にて開催されました。
オープンイベントとして開かれた今回は、KKPC内外から多様な方々が参加。開会前の早い時間帯から多くの人が会場に足を運び、展示された未来空想新聞を興味深そうに眺めている様子が見られました。
開会時間を迎えると、会場の参加者たちはサークル状の配置された椅子へ着席。冒頭、パナソニックHDの甫足 博信さんからKKPCとmocの説明がされ、その後今回の登壇者である姜 花瑛(Kang Hwayoung)さんにマイクが渡されました。
姜さんはパネルトークを始める前に、会場の参加者に向けて未来空想新聞の企画を説明。さまざまな共創パートナーとともに描いてきた未来を、これまでの歩みを振り返りながら紹介しました。
「未来空想新聞は『こどもの日は、未来を考える日。』をキーワードに、より良い未来を実現していくことを願って、毎年5月5日に17年後の未来を空想して製作される新聞です。本プロジェクトは5年前から実施しており、毎年異なるテーマで紙面を構成。有識者や著名人へのインタビューにイラストや漫画など、未来を描く示唆となる空想をさまざまな形式で掲載しています。これらはただ空想を紹介するのではなく、この先の未来がどうなっていくのかという問いを発信するメディアとして企画してきました」。
パナソニックのブランドコミュニケーション施策として注力されてきた同企画。昨年は、全国の中高生にも配布したといいます。しかし、今年は会社の体制が大きく変わった影響もあり、発行を継続できるかどうか議論になったと話します。
「難しい判断ではあったのですが、我が社の創業の地である門真市にて発行する意義を改めて考え直し、この度門真市からのご協力をいただいて発行することができました」。
今年発行された未来空想新聞は、門真市の中学生や一般の方から見出しを募集し紙面製作をするという地域を巻き込んだプロジェクトとなっており、門真市の協力は欠かせませんでした。加えて、市との架け橋となったKKPCに対しても「皆さんがとても力になってくださった」と話し、発行にあたって協力をしてくれた関係者に対して繰り返し感謝を述べました。
こうした取り組みを通じて、姜さんは企業と地域とのつながりや、企業が地域の中でできることを以前にも増してより強く意識するようになったとのこと。実際に今回の発行にあたっては、空想募集のためにブースを出展したららぽーと門真でのKADOMADO開館プレイベントにて、「新しいさまざまな共創パートナーと出会うことができ、つながりが広がった」と、その喜びを笑顔で語りました。
“予測”ではなく、“志向”で語る門真市の未来
姜さんによる未来空想新聞の説明ののち、プログラムは地域における同紙の可能性を探るパネルトークへ。本紙製作に関わった方々がパネラーとなり、テーマについてそれぞれ所感を述べました。
最初に与えられたテーマは、『未来空想新聞2043門真市版』を読んだ感想についてです。姜さんが「結構必死に作ったので、みなさんからの率直な感想が欲しいです」と投げかけると、会場は一気にあたたかい雰囲気に。
最初に感想を述べたのは、門真市役所の濱田 翼氏。「見事な紙面だった」と完成度の高さに感嘆しつつ、空想の特徴について「ざっくりとした未来ではなく、門真の抱えている課題や持っている資源に立脚した未来が描かれているのが良かった」と話しました。
「我々行政では、○カ年計画や振興計画といった未来ビジョンを策定し発信していますが、実際のところなかなか市民の皆様へ伝えられていません。未来空想新聞のように市民の皆さんととともに作り上げ、カジュアルに届けられるコンテンツは、手段の一つとしてとても有効だと感じました」。
続いてマイクを握ったのは京阪HDの岸本 雄氏。これまで積極的に新聞を読む機会は少なく、義務的に目を通していたと話す同氏は、「一つひとつの空想記事が面白く次々に読み進められた」と、未来空想新聞の魅力を語りました。
濱田氏同様、「さすがプロの作った紙面だと思った」とクオリティの高さへの感動をあらわしたのは、CCCの阿部 透子氏。ららぽーと門真における未来空想新聞のブースで、実際に空想新聞の見出し製作に没頭している子どもたちの様子を見ていた阿部氏は、「みんなが一生懸命描いていたものが素敵に仕上がっていてとても嬉しい」と目を細めました。
それぞれが感想を述べ終わったところで続いてのテーマへ。今回の紙面製作にあたっての背景を各々の視点から振り返ります。最初に取り上げられたのは、朝日新聞の名物コーナーである「天声人語」に倣った「天空人語」。こちらの紙面製作は門真市役所が担当しており、濱田氏が製作過程について説明しました。
「門真市では令和6年から10年にかけて『門真市ものづくり産業振興計画』を策定しており、『ものづくりテーマパーク構想』を掲げています。今回のご相談があった際に、市の産業振興課の児島さんが発表されたこちら内容が記事に反映され、紙面として仕上がりました」。
紙面製作のためのインタビューはオンラインで実施され、産業振興課の児島氏が未来の2043年から参加したという設定で進行。最初は創造性溢れる演出にインタビュー側は戸惑ったそうですが、「他のインタビューではなかなか見られないユニークな発想だった」と姜さんは笑顔で振り返ります。会場に参加していた児島氏は、マイクを渡されると「恥ずかしくて緊張したが、普段から未来を空想するのが好きなので、インタビューも自然に楽しむことができた」と茶目っ気たっぷりに応えました。
続いて「こんな地域社会になったら嬉しいなとの思いを詰め込んだ」と目を輝かせて語ったのは京阪HDの岸本氏。冒頭、「最初に断っておきますが、これは列車が水没しているわけではないですよ」と説明し、会場の笑いを誘いました。
「私の地元は大阪のベイエリアにあるのですが、京阪は中之島の川の手前までしか走っていません。この川を突っ切るとベイエリアまで走らせることができるんじゃないかと考え、同案を提案しました」。
環境に配慮した水陸両用の同車両は、水質を改善しながら走る機能を有しており、綺麗になった川の景色を楽しみながら移動することができるそうです。「このアイデアについて会社の方から何も言われなかったですか」と心配した姜さんの質問に対しては、会場に参加していた岸本氏の挑戦を支えた同社の難波氏から「若い人がいきいきとアイデアを出せる機会を作りたかった。最初はエクスキューズの塊のような案だったが、それでは面白くない。好きなことを形にしてもらえるようフィードバックをした」と、自由闊達な製作背景が語られました。
最後に、KADOMADOを移動式図書館にする空想広告を出稿した阿部氏は、「設計してくださった遠藤克彦建築研究所さんに怒られるかなと思いましたが……」と、当初は一抹の不安を抱えていたと話しつつ、製作の過程を次のように振り返りました。
「KADOMADOは多様な方々の交流やコミュニケーションを生み出す場でありたいと考えており、そうした場を広い世界に届けたいとの思いでロボットのイメージを描きました。設計を担当してくださった遠藤さんには実際に空想をご覧いただいたのですが、『もしかしたらロボットも設計したかも』と笑っていただき、あたたかく受け入れてくださって嬉しかったです」。
和気藹々とした雰囲気の中で空想とその背景が語られた後、話題はパネルトーク最後のテーマである「門真市の未来」へ。司会進行の姜さんからは、「こうなるだろうとの予測ではなく、こうしたいという志向についてお話を聞きたい」とテーマ説明がなされ、それぞれのパネラーにバトンが渡りました。
最初に口火を切ったのは濱田氏。「子どもたちが『門真で働いている大人ってかっこいい!』『門真で働きたい!』と思えるような17年後になっていると嬉しい」と展望を述べ、実際に未来に向かって動いているKADOMADOのクラフトラボの取り組みを紹介しました。
続いてマイクを受け取った岸本氏が思い描くのは、「日本一話が面白い街」という未来。「本当にやりたい仕事をしている大人の話は総じて楽しい」との考える同氏は、イキイキと働く大人が増えれば自然と子どもたちにも良い影響が伝播するだろうと話します。また、濱田氏のKADOMADOの紹介を踏まえ、門真市にはすでにそうした大人と出会える場があり、思い描く未来を実現できるポテンシャルがあると期待を寄せました。
トリを務めた阿部氏は、「門真市を未来が見える街にしたい」と語り、直近のエピソードを紹介します。
「先ほどそのあたりを歩いていらしたお母さんが、お子さんに『門真に引っ越してきて良かったやろ』と話されていたんです。それがとても嬉しくて、KADOMADOがそう思ってもらえる場になるようもっと頑張りたいなと思いました」。
三者三様の未来展望が述べられたのち、パネルトークの司会進行を務めた姜さんへとマイクが戻ります。姜さんは未来空想新聞の企画・発行を通してKKPCのコミュニティに参加できた喜びについて触れ、「今後門真市でどんな面白いことができるのかを想像してわくわくしている。仕事を通して地域の未来をデザインしていけるように取り組みたい」と展望を述べて本プログラムを締め括りました。
未来像の共通点と差異を楽しむワークショップ
パネルトークを終えて休憩を挟んだ後は、続いてのプログラムであるワークショップへ。参加者はそれぞれ数人のグループに分かれてテーブルに着席。姜さんからワークショップで使用するカードゲーム「未来のコンパス」の説明がされました。
「未来のコンパス」は、未来予報株式会社が開発した未来に向けた価値観を対話するカードゲーム。技術や正解を議論するのではなく、一人ひとりの価値観や未来への期待、不安を共有することで相互理解を深め、未来をともに考えるきっかけを生み出すことを目的としています。
ゲームルールは至って簡単。参加者は32枚のカードの中から、自分の価値観に近い3枚を選びます。納得が行くまでカードを交換しながら組み合わせを揃えた後、選んだ理由や自身の経験、理想の未来について少人数で対話を実施。その後、同じテーマを選んだ参加者同士で考えを共有し、多様な価値観に触れながら理解を深めます。最後は対話から得た気づきをもとに未来のアイデアを言葉にし、一人ひとりの想いを参加者全員で共有。この段階でゲーム終了となります。
姜さんからのゲームルールの説明がされた後、各グループでは早速カード選びを開始。お互いに会話をしながらカードの組み合わせを考える様子が見られました。
それぞれの発表が終わったところで、対話の場はグループから全体へと移行。各グループでどのようなカードが選択されたか、またその背景や理由について発表がされました。ここで面白かったのは、同じ未来像を選んでいても、その背景にある人生経験や価値観は参加者ごとに大きく異なっていたことです。
たとえば、「多くの選択肢があふれる未来」というテーマ一つをとっても、AIによって効率的に迷わず選べることを価値としている人もいれば、自分の興味や好奇心に従って自由に選べることを重視している人もいました。また、「コミュニティが支える未来」においても、挑戦を後押しする場として捉える人、支え合いの循環を実感する人、ありのままの自分でいられる居場所として語る人がおり、それぞれ異なる価値観の多様性が浮き彫りになりました。
それぞれの発表を受けた姜さんは、無理にそれらをまとめて整理することなく、多様な価値観そのものを成果として提示。プログラムを振り返って、「一日を通して皆さんの持っている未来への価値観が共有された。今後はそれを実現するためにどういったアイデアがあるのかを“空想”という形でアウトプットしてほしい」と述べ、mocを締め括りました。
“未来づくりの隣人”という見出しに向かって
オープンイベントとして開催された、記念すべき第一回のmoc。KKPCのメンバーに限らず多くの参加者が集った同会は、未来空想新聞を媒介とし、それぞれの思い描く未来像を語り合う場になりました。空想から始まったその風景からは、わたしたちが“未来づくりの隣人”となる展望が見えてきたのではないでしょうか。
今後もmocを通して育まれた関係がより広く、そして深くなっていくことを目指し、「未来づくりの隣人」という見出しに向けて歩んでいきます。
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