熱電変換材料で世の中を変えていく
専門:無機材料合成、計算物質科学【博士(理学)】
テクノロジー本部マテリアル応用技術センター
理論から現実に飛び出す
学生時代は理論物理の世界で、数式と計算機を武器に物質の真理を追究していたTI本部の玉置研究員。新しいアイデアを生み出す理論研究を突き詰めていくうちに「ものづくりに繋がる世界でアイデアを生み出したくなった」と、環境エネルギー技術で名が知れていたパナソニックに入社した。「確立されていない分野のほうが、自分らしさが出せる」と熱電変換材料の開発を専門とし、いかにして世の中で生み出される熱を有効利用するかを突き詰めている。
無駄な3分の2をどうするか
「最初の2、3年は理論家としての背景を忘れて実験に没頭する時代だった。その後1、2年は新しい材料開発のアイデアが見いだせないつらい時期だった」と入社後の数年を振り返る。「学生時代から突き詰めてきた理論」を自分の強みと考えていた玉置。理論計算と実験技術を両輪に活躍することを考えた。転機は入社して5年目。理論と計算をつきつめ、自ら合成実験を行った結果、P型にしかならないと考えられていた半導体がN型になり高性能化することを発見し、新材料として研究者たちの間で大きく注目された。
石油や石炭、原子力――。人々は様々なものを燃やして生活している。ただ、有効利用されるものはその3分の1だ。残りの3分の2を使うことができれば、車の燃費が向上したり、工場でのエネルギー効率が大幅に改善されたりしていく。玉置が取り組んでいる熱エネルギーの有効利用は、パナソニックが10年以上取り組んでいる難題だ。
自分の強みを生かす
博士課程を卒業し、入社した玉置が思う企業内研究者は「明確な出口に向かって、技術を追求する」集団。自らの研究で世の中のトレンドが変わっていき、なにより社会のためになっていることに喜びを感じる。大きな企業で働いているからこそそれぞれの分野が成熟していても、意外なコラボレーションから革新的なものを生み出していくことができると思う。
最終製品自体を大きく変えることができる材料開発の競争環境は、ビッグデータや人工知能の活用で高速化し激しさを増している。そんな環境に身を置く玉置が重視するのは「きちんと現象を説明するモデルを立てて道筋をつけながら、新しいアイデアを生み出していけるか」だ。材料の発見から出発してデバイス、システム、ソリューションを作っていくことが、パナソニックで働くやりがいだ。「理論屋や計算屋は企業において少数派。自分にしかできない仕事がたくさんある」。これからも博士課程で身につけた強みを武器に、「熱で世の中を変えていく」と静かに闘志を燃やす。