僕が見たものから未来が動き出す

僕が見たものから未来が動き出す

誰も見たことのないものを見つける

「世界で誰も見たことがないものを見つける。それがデバイス開発の力になる」と話す野村優貴研究員。現在、自身が学生時代に学んできた電子顕微鏡による材料解析を担当している。解析をするからには、現場を近くに感じられるモノづくりをしている会社で研究し、スキルを発揮したいという思いでパナソニックに入社した。

入社時から2年ほど、二次電池の研究に携わり、次世代の電池作りを目指した。現在は、大学時代の専門でもある透過電子顕微鏡を使って、リチウムイオン電池を充放電させながら解析することをメインミッションとしている。動かしながら見ないと誰も見たことのないものを見つけることはできないと話す野村は、リチウムが動く様子をリアルタイムで観測し、2017年に約2年半を費やした研究で国際学会のプレゼンテーション賞を受賞している。

インタビュー風景

電池づくりの経験が革新を呼び込んだ

普通の解析は動いていない状態で解体して材料の一部を見るのだが、今は、デバイスが複雑なので、動かしながらでないと見えない現象が多くある。野村が研究するアドバンストアナリシスとは、高度解析のこと。新しい解析手法を作っていくこと、誰も見たことがないものを見えるようにすることをミッションとしている。2017年の受賞まで、上司には長い目で見てもらったと話す野村。研究の成果が人の目に触れ、ようやく花開く春が来たのかなと微笑む。
これまでの研究を通じて感じたのは、この世界は、持てるものを出し尽くして勝負しないとダメだということ。現時点での自分の強みと何かを組み合わせることで新しいオリジナリティを生み出すことが大切だと話す。野村の場合は大学時代の研究と入社からの電池の研究の積み重ねで勝負したことが、結果につながった。成功の秘訣は「解析の技術×電池の技術」の両方をわかっていたことが大きい。技術融合はすごく大切と実感したという。一つの研究を進める過程で、あるところまでいくと限界が見えてくるのはよくあること。そこで、目線を少し上げると他の分野からの視野が広がることもある。自分の中で専門性を広げること、さらに必要な知識は取り込んでいくことも重要だという。
10名ほどのチームでは、解析に関わっているものの、専門分野が全員違うという面白さも感じている。パナソニックにはスペックの良い装置があるのも魅力だという。それは、装置に依存するところがある解析において「スペックが言い訳にならない」環境であることを意味する。つまり、すべては自分のアイデア次第なのだ。誰も見たことがない結果を、興奮冷めやらぬ状態で開発に持っていける距離感も気に入っているという。

インタビュー風景

「電気化学×解析×機械学習」で勝負

世界に目を向けているため、普段から積極的に論文のチェックはしていると話す野村。機械学習(AI)の融合には特に注目している。生の実験データで見ると何が写っているかわからないものを、機械で見ると分かる。人間の目よりも、ちゃんと学習させてあげることで、機械は反応してくれるもの。この分野が進んでいるアメリカの論文を追いながら、自分でもわかっている部分も含めて世界を見ているという。
研究を進めていくと、4次元、5次元といった非常に複雑なデータを扱う世界がある。そうなるとどうしても人間の目では足りない現実がある。だからこそ、「電気化学×解析×機械学習」の融合で違う景色を見たいと思っていると話す野村。そのために必要なのは、スピード。いかに早く結果を出して、論文を発表して、製品にしてアウトプットしていくか、これが自身のミッションだという。
今のテクノロジーイノベーション本部に年功序列はないと断言できるほどオープンな環境だという。提案したことに、ビジョンが見えて、理にかなっていて、この先の世界が広がることを説得できれば、やりたいことがやれるのだ。
「産業は学問の道場なり」という言葉を引用し、研究が産業につながるまでには大きな谷があるもの、研究としてはすごいけれど製品に繋がらないことは多々あること、そこを超えたいという人が、パナソニックのような「企業に来る人」だと説明する。いわゆる分析専門会社は、今あるものを解析するけれど、自分たちはないものを見ることをミッションとしている。複雑化する材料解析では、一つ見えると世界が変わる瞬間があるのだという。

同じ装置を使っても、マインドが違えば違うものが見えるはず。一つ見えることで世界が変わる解析という分野で、世界を変えていきたいと熱く語る野村。ビジョンが見える提案をすれば、やりたいことをやらせてもらえる環境はパナソニックの魅力。自由と一緒に責任も伴うが、結果が出せればこれ以上の環境はないと語った。

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野村 優貴
野村 優貴

専門:応用物理、固体物理
テクノロジー本部マテリアル応用技術センター

※所属・内容等は取材当時のものです。