【風土革新WG座談会レポート】
MI本部の夏祭りに見る、風土革新の実践と組織文化の引き継ぎ方
約4ヶ月という限られた期間で、初対面のメンバーたちとチームを組み、プロジェクトを成功へと導いているチームがあります。
北門真の地にて、長年開催されてきたMI本部による夏祭り。同イベントの企画運営を担当する、「風土革新WG」と呼ばれるチームの皆様です。「風土は競争力強化の根幹である」との考えのもと、風土向上を目的とし、毎年ゼロベースで組み上げたチームで同イベントに臨んでいます。
構造改革による新体制下でのスタートに、新棟「Technology CUBE」の誕生など、パナソニックにとって大事な転換期である2026年。本稿では、新たな環境でのコミュニケーションや、これまでに培ってきた組織文化の継承のヒントを、同チームメンバーの座談会から紐解きます。
MI本部〜夏祭り〜
MI本部が行う、風土醸成を目的とした活動の一つ。「風土は競争力強化の根幹」と捉え、部門内のコミュニケーションの活性化を狙って実施されている。準備期間は4月から8月の4ヶ月。毎年実行メンバーが入れ替わり、コンセプトもゼロベースで検討し直される。2025年度のコンセプトは「万博」で、クレープやケバブなど、さまざまな国の料理を提供。来場者数は約550名で大盛況となった。
登壇者紹介
岡野 修輔(おかの しゅうすけ)
パナソニックプロダクションエンジニアリング(株) 取締役
成形事業センター 所長
マニュファクチャリングイノベーション本部 成形技術開発センター 所長
上田 智(うえだ さとし)
パナソニックプロダクションエンジニアリング(株)
成形事業センター/技術部/設計技術一課
シニアリードエンジニア
奥 康樹(おく やすき)
パナソニックプロダクションエンジニアリング(株)
設備製造統括部/開発製造技術二部/機構二課
課長
土屋 竜司(つちや りゅうじ)
パナソニックプロダクションエンジニアリング(株)
営業部 営業課
主幹
石倉 智貴(いしくら ともき)
マニュファクチャリングイノベーション本部
マニュファクチャリングソリューションセンター CE技術推進部
シニアエンジニア
年度を超えたチーム間の協力で、スムーズな運営体制に
MI本部の夏祭りは、パナソニック内でも有数の歴史ある会社行事の一つ。2025年度には社員と家族あわせて550名が来場した、大規模な社内イベントです。過去には屋台をはじめ、ステージ企画、照明演出、子ども向けコンテンツなど、豊富なプログラムが用意されました。多くの部門が関わりながら北門真地区全体の一体感をつくる場として位置付けられた同イベントは、その効果の高さから、これまで継続して開催されてきました。
2025年度の企画運営を担ったのは、総勢34名の「風土革新WG」。初めて顔を合わせるメンバーが多いなか、4月から8月にかけて約4ヶ月で夏祭りをつくり上げました。座談会では、時系列に沿う形でチームの立ち上げ、企画、運営、そして今後の展望について話をうかがいます。
最初に口火を切ったのは、総監督を務めた岡野さん。風土革新活動の体制について、次のように説明しました。
「風土革新活動は毎年一から始まります。決まったテンプレートを使い回すのではなく、コンセプト策定から実施しており、それに伴って毎回実施の形やコンテンツが変わります。チームメンバーは一年ごとに交代するため、人に紐づいているノウハウが毎回リセットされていました。しかし、最近になって前年度までの経験やノウハウを翌年に引き継げるように体制を変更。積み上げてきたものを継承し、円滑な運営が可能になりました」。
前年度までの引き継ぎ資料や来場者数のデータから、食事の用意や座席数といった部分はある程度予測が立てられるようになったと話す岡野さん。一方、引き継ぎで難しいのは“暗黙知”の部分です。特に毎年変わるコンテンツについては、各人から多種多様なアイデアが出され、拡散しがちになるとのこと。それをまとめるのが大変だと語りました。
岡野さんの話を受けて、今回イベントを担当した土屋さんは、「仕事が忙しい時期で大変だったが、チームメンバーの助けがあって進め切ることができた」と当時を振り返ります。
「岡野さんが話されていた通り、過去の前任者が引き継ぎ資料やアドバイスを残してくれていたため、当日までに何をするべきかが明確になっていて進めやすかったです。とはいえ、普段の通常業務と並行して企画するわけですから、大変だったのは確かですね。コンテンツにおいては、チームメンバーの皆さんの積極的な協力のおかげで多数のアイデアが集まり、スムーズに進めることができました。本当に感謝しています」。
コンテンツのアイデア創出フェーズにおいては、知見を持ったメンバーから積極的に提案があり、リーダーの役割に徹することができたと話す土屋さん。イベント担当部署のみでは対応しきれないアイデアについては、別チームのプロデュース班の力を借りるなど、チーム間での協力体制が働いていた点が良かったと振り返ります。
「さまざまな知見を持った人が入り交じり、新しいものを提案し、実行に移して成し遂げていく。これは風土革新WGに限らず、パナソニック全体としてある良い文化だと感じました」。
土屋さんと同様に、「周りのメンバーに助けられた」と話すのは、飲食を担当した石倉さん。普段は一人で研究開発をする機会が多いそうですが、本プロジェクトではチーム一丸となってプロジェクト成功に向かう体験ができ、「とても新鮮で楽しかった」と笑顔で振り返ります。
「コンセプトが『万博』だったので、いろいろな国の料理を提供することにしたんです。普段なかなか触れることのない異なる食文化を用意しようと、みんなで試食しながら会話できる風景があって、結果としてアイデアもたくさん集まり、とても良かったですね」。
石倉さんたちのこだわりは功を奏し、当日は飲食ブースに行列ができ、早々に売り切れたとのこと。オペレーションも刷新したため、行列にムラがなく、並ぶ時間の短縮化に成功。来場者の満足度は高かったそうです。
困りごとや悩み事が言い合える関係構築を
企画プロセスにおいて、参加者全員のチームワークと相互支援が機能していた風土革新WG。お互いに協力し合う風土はどのように育まれたのでしょうか。全体リーダーを務めた上田さんは、「自ら積極的に『助けてください」を発信した」と説明します。
「僕はリーダーとして先頭に立ち、周りをグイグイ引っ張って行くタイプではないため、最初に皆さんの協力が必要です、助けてくださいと話をしました。業務としては、各班のリーダーさんに進捗を確認し、トラブルが起こっていないかを確認し、様子を見ていました。当日もアクシデントがない限りは特に出番はなく、それが安全にイベントを完遂できたことの証左だと思っています」。
一貫して謙虚な姿勢で自身の役割を語った上田さんですが、プロデュース班については「バランサーとして機能した」、「チーム全体のポジティブな空気感を生んだ」と評価します。
「前年度から開設が待望されていたプロデューサー班には、イベント経験者が多く所属しており、僕もメンバーとして加入していました。主な役割は判断と調整です。各チームで決まった案をジャッジしたり、タイムスケジュールやプログラムの調整を行ったりと、バランサーとして機能しました。何より良かったのは、チーム全体が前向きな姿勢だったことです。ポジティブな空気に満ちており、困ったことや悩みが言い合える雰囲気だったんです。イベントを成功させようという機運に満ちていました」。
プロジェクトにおいては、リハーサルの段階でプログラムの時間が収まらなかったり、設営上無理があったりといったトラブルがあったといいます。しかし、同プロジェクト経験者で設営担当の奥さんをはじめ、チーム内のメンバーで知恵を絞り、工夫を凝らし、前向きに検討する動きが見られたそうです。
「私は運営側で夏祭りに参加するのが3回目になります。これまでも設営を担当していたので、ある程度全体の流れが見えていましたし、どのタイミングで追い込まないといけないのかも見えていました。私が一番大事にしていたのは、皆さんが事故なく安全に夏祭りを終えられること。それ以外は“良きに計らえ”といったスタンスで、柔軟に対応させていただきました」。
これまでの座談会の進行をにこやかに見守っていた奥さんは、懐かしそうにプロジェクトを振り返ります。コンテンツを担当した土屋さんも、飲食を担当した石倉さんも、「奥さんには本当に助けられた」と口を揃え、全幅の信頼を寄せられていたことがうかがえました。
こうした和やかかつポジティブな雰囲気作りに一役買っていたのが、総監督の岡野さん。「夏祭りは本当に大変」としつつ、「何より運営側が楽しむことを大事にしていた」と語ります。
「参加者の皆さんに楽しんでもらうためには、つくる側が楽しんでいないといけないと思っていました。今回この座談会を通して、メンバーから『大変だったけど楽しかった』との言葉を聞けて、この瞬間にやって良かったなと感じています」。
岡野さんの話の後、全体リーダーの上田さんが「あまり口出しをせず、それぞれのチームのリーダーに任せられたのが良かったのかもしれない」と成功の要因を振り返りました。
チームを牽引するそれぞれのリーダーの話を聞いていて感じるのは、マイクロマネジメントのように過度に介入することなく、現場の進捗を見守り、結果を“待つ”余裕を持てていたことです。それはチームが必ずゴールに間に合わせてくれるという信頼があってこその姿勢であり、各々がお互いに強い信頼関係で結ばれていることの証でもありました。
これまで育んだ文化を継承するのか、もしくは新たに再創造するのか
2025年の風土革新WGの振り返りを終えたところで、話題は同プロジェクトの今後の展望へ。総監督の岡野さんは、2026年以降の風土革新WGのチーム体制について、次のように語りました。
「今後については、やはり前年度までの経験やノウハウをどう引き継いでいくかが大事になります。そのため、チームメンバーについては毎年刷新するものの、経験者をなるべく裏方として引き入れるようにしてきました。ここがポイントで、リーダーではなく裏方のアドバイザーとして入ってもらう。そうすることで、経験やノウハウを継承できる体制にしています」。
岡野さんの話に続き、実際に経験者として今回WGに参画した奥さんが、風土革新WGと北門真の持つ文化の継承について言及します。
「メンバーのほとんどは、最初から高いモチベーションを持って臨んでいるわけではありません。共に企画を作り上げていく過程で、段々と気持ちが入ってくるんです。WGにはそうした“みんなで協力してやっている”感があり、文化があるんです。加えて、元々北門真には“役割として受けたことはなんとか最後までやり切る”といった文化があるのも大きい。こうした文化が、夏祭りを通して共有・継承されていくと嬉しいですね」。
バトンは戻って岡野さんへ。2026年度以降について、これまでの引き継ぎとは異なる難しさがあると指摘しました。
「2025年度までは、北門真という地区だけで引き継ぎが行われてきました。しかし、2026年度以降については、メンバーの大半が西門真に新設された『Technology CUBE』へと移動し、異なるエリアで引き継ぎが行われることになります。そのため、以前とは異なる難しさが出てくるだろうと推察しています」。
ここで一呼吸を置き、岡野さんは夏祭りにおいて継承されるものについて紹介。前年度までに積み重ねた成功体験や、参加した人たちが感じた体験価値を挙げました。こうした目に見えない文化的な資産は、翌年以降へと脈々と受け継がれ、組織風土を育んでいく栄養になります。今日ある夏祭りの文化は、こうした積み重ねがあって形作られてきました。
一方で、岡野さんは新たに文化を創造する観点も大事ではないかと話します。
「2026年度以降は、これまでと環境が異なるので、新しい文化を創造するくらいの発想に切り替えないと上手く回らないかもしれません。私たちは文化を引き継ぐ際、受け手の視点を欠きがちです。彼らからすれば、もしかしたら“押し付けられている”と感じているかもしれない。新たな環境で『これが自分たちの文化だ』と自信を持ってWGを進めるために、これまでの伝統や文化は本当に必要なのか。そうした議論も今後必要になってくるのではないでしょうか」。
これまでの文化はアーカイブとして残し、新たな世代が壁にぶつかったとき参照できる状態にしておく。決して無理に継承はしない。そんなスタンスが一番良いのではないかと、岡野さんは考えます。
先代が築いてきた文化を盲信的に良いとするのではなく、議論を重ねながら新しい環境や世代にフィットさせていく。そうした継承と再創造のサイクルが、より文化を、組織風土を豊かに育んでいくのかもしれません。
2026年度。新天地である西門真にて、風土革新WGの文化がどのように華開くのか。新たな風土の萌芽を感じさせつつ、座談会は結びとなりました。
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