2026.04.27
イベントレポート

【3月EX Monthly Meetupレポート】
画一化するAI時代を生き残る鍵。
組織文化を可視化して、独自性を磨く。

組織文化 組織開発 Monthly Meetup

AI時代にあって、我々はどう在るべきか━━。

そんなテーマがビジネスフォーラムや講演会で多く聞かれるようになりました。やりたいことを実現する技術は年々加速度的に進化しており、脅威として受け止められています。従来型の働き方のままでは、自分たちの存在意義が失われてしまう。昨今、各所で冒頭のテーマが語られているのは、そうした不安の証左なのではないでしょうか。

一方で、上記の不安に対し、ある答えが力を持ち始めています。それは「“やりたい”という意志」です。どれだけ技術が発展しても、それらを用いて何をするのかを決めるのは使役者であるわたしたちに他なりません。意志こそが、唯一無二のオリジナリティであり、アイデンティティを生み、AI時代に必要な力になるのだと、その答えは教えてくれました。

2026年3月のMonthlyMeetupは、「意志ある道を作り、希望の物語を巡らせる」をミッションとする戦略デザインファームBIOTOPEから代表の佐宗氏が登壇。ただの機能としての組織ではなく、AI社会において存在意義のある「意志ある」組織であるために、わたしたちは何を知り、何に取り組むべきなのか。この命題を考えるにあたり、「組織文化」という観点から示唆に富むお話を聞かせていただきました。

イベント詳細

EX革新活動をするメンバー同士が活動を共に振返り、フィードバックをし合い、新たな学びの視点を持つことで、今後の活動を加速させることを目的として立ち上がった学びの共有の場。現在はより柔軟に形を変え、社内外の知見を組み合わせることで、新たな共創の形を生み出すことを目的とした、テーマ型のオムニバス形式の勉強交流会へと成長しています。

2026年3月度のテーマは「企業文化を観る方法」。戦略デザインファーム「BIOTOPE」代表で戦略デザイナーの佐宗氏をお招きし、組織のアイデンティティとなり得る“組織文化”の定義やその構成要素、デザインの仕方などを学びました。また、パナソニックHDからは家庭用燃料電池システム「エネファーム」の開発に携わった小原さんが登壇。新しい事業づくりの中で得た知見を踏まえ、佐宗氏と対談を行いました。

これまでのMonthlyMeetup

登壇者紹介

佐宗 邦威(さそう くにたけ)

東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科修士課程修了。P&Gにて、ファブリーズ、レノアなどのヒット商品のマーケティングを手がけたのち、ジレットのブランドマネージャーを務めた。ヒューマンバリュー社を経て、ソニークリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わったのち、独立。戦略デザインファーム「BIOTOPE」を創業。企業規模の大小・領域問わずバラエティ豊かな企業・組織のイノベーションおよびブランディングの支援を行うほか、各社の企業理念の策定および実装に向けたプロジェクトについても実績多数。多摩美術大学特任准教授。

小原 英夫(おはら ひでお)

大阪市立大学(現大阪公立大学)工学部機械工学科卒業後、 株式会社本田技術研究所に入社。1996年より松下電池工業株式会社技術本部。2001年松下電器産業株式会社くらし環境開発センターにて燃料電池の開発に従事。2012年パナソニックR&D本部エネルギーソリューションセンターエネルギーシステム開発室室長。2014年先端研究本部、環境・エネルギー研究室長を経て、2019年イノベーション推進部門マニュファクチャリングイノベーション本部長に就任。

組織文化の定義とその捉え方
重曹構造を読み解き、可視化するパターンモデルを

春の足音がまだ遠い3月上旬。EXLから新たに「Technology CUBE」へと場所を移し、MonthlyMeetupが開催されました。今回は同施設8Fにある「ひら区(共創区)」が会場に。自然光が差し込むあたたかなフロアには、開会前から参加者が集まり歓談する様子が見られました。

開会時間を迎え、パナソニックHDの甫足さんから挨拶があったのち、登壇者の紹介へ。今回テーマについてお話ししてくださるのは、戦略デザインファーム「BIOTOPE」代表の佐宗 邦威氏。同氏はこれまで様々な企業・組織のイノベーションおよびブランディング支援のほか、各社の企業理念の策定および実装に向けたプロジェクトを多く手がけてきました。

戦略デザインファーム「BIOTOPE」代表、佐宗 邦威氏

同氏はまず組織文化の重要性について、AIによる画一化された最適解が数多く出てくる昨今、会社および組織“ならでは”の独自性を出すために欠かせないものだと主張。組織心理学者エドガー・シャインの言葉を引用して次のように説明しました。

「シャインは、組織文化を『ある集団が、外部への適応や内部の統合を通じて学んできた、共有された基本的な前提』と定義しています。理解のためのキーワードになるのが外部適応と内部統合の2つ。外部適応とは、外の環境で会社組織が生き残るために必要な適応、すなわち“外での戦い方”を指します。一方、内部統合とは“内側のルール”であり、組織内での振る舞い方や規のことです。この両者の関数によって生まれるのが『組織文化』なのです」。

組織文化の定義を述べたのち、佐宗氏はこの抽象的な対象をさらに深掘りし、具体的な3つのレベルに分けて解説していきます。

「まず表層にあるのが、可視化された人為的創造物。例えば行動パターンであったり、組織内での共通言語であったり、名称やロゴ、さらには儀式や行事なども含まれます。次に意識下にある価値観。明文化された理念やバリュー、戦略などがこれにあたります。最後に深層の無意識下にある基本的前提。なんとなく当たり前とされていることや常識などですね。組織文化にはこれらの3つのレイヤーがあり、氷山のように捉えるとわかりやすいかもしれません」。

組織文化には3つの層があり、目に見える表層的な組織文化と、深層にあってなかなか触りづらい組織文化で分かれるのだと佐宗氏は説明。自社内の組織文化を知るにあたり、必要な視点や考え方を提供しました。さらに、同氏は組織文化についてさらに広く捉えるべく、別の研究者の視点も提示します。

「ヘールト・ホフステードの説では、組織文化を玉ねぎのように捉えています。表層の部分はわかりやすくシンボリックなもの。そして内部に向かうにつれ、組織文化を体現しているヒーローがいたり、儀式があったり、そして価値観があるという、皮を剥いていくごとにどんどん本質に近づいていく構造になっています」。

佐宗氏が紹介した2人の学者の2つの説。それぞれ視点が異なる一方で、表層と深層があり、可視化できるものとできないもので分かれている点が共通しています。この重層的な構造が組織文化の特徴と言えるのかもしれません。

組織文化の捉え方が紹介されたあと、同氏の話は「組織文化の生まれるメカニズム」へと進みます。

「『文化は人がモノマネをする特性から生まれた』とする面白い説があります。ジョセフ・ヘンリックという文化人類学者が書いた著書『文化が人を進化させた』にある内容で、人はミラーニューロンと呼ばれる神経を持っており、見聞きしたものを真似たり共感したりするとされています。人類はこの神経によって、組織の中での勝ちパターンを学習し、模倣し、効果的に生き残ってきました」。

原始時代より人類は、種の生存のために“群れ”の中で名声のあるリーダーの言動を模倣。世界で生き残っていく知恵として蓄積し、共有してきました。これが今の「組織文化」につながっているのだと、佐宗氏は説明します。

抽象的な組織文化を捉えようと、いつにも増して積極的にメモを執る参加者の姿が見られた

同氏はここで一息つくと、これらの説明を踏まえ、組織文化を次のようによりわかりやすく整理しました。

「これまでさまざまな視点で組織文化を見てきましたが、シンプルに言うと、『私たちは〇〇という価値基準のもと、△△の強みを生かした××のような行動を続けてきた。その背後には、□□の環境があって育ってきた』ということになります」。

組織文化について大まかな概念が掴めてきたところで、話はより実践的な内容に。実際にBIOTOPEでも活用されている、組織文化を可視化するためのパターン「DNA」モデルが紹介されました。

「自著『理念経営2.0-会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ-』においては、組織文化を可視化するパターンとして、『DNAモデル』を使用しています。まずコアの部分に価値観があり、その周辺に強みがあって、さらにその周りに行動がある。そして行動の背景には自分たちが生きている環境があり、影響を受けていると、そういった構造です」。

BIOTOPEで使用している組織文化のDNAモデル
実際に組織文化を可視化し、DNAモデル落とし込まれた事例

組織文化の構造を理解し、可視化することができるようになったところで、話は「いかにデザインするか」のアプローチ方法へと進みます。佐宗氏は、アプローチするレイヤーを「日常習慣のデザイン」「制度のデザイン」「環境のデザイン」の3層にわけ、それぞれで実践できる具体的なアクションを提示しました。

「組織文化のデザインにおいては、アプローチするレイヤーが3つあります。一つは日常習慣のデザイン。関係、思考、行動、結果の順に、好循環のサイクルを生むように働きかけます。例えば、会社の理念を語り、表彰する機会を設ける。すると会話や思考のクセに変化が起こり、行動が変わってくる。行動が変われば当然その結果も変わります。こうした部分は日常の中でアプローチできる部分ですね。次に制度のデザイン。具体的には人事制度や評価制度が該当します。これらを組織理念に合った形にすることで、より組織文化が強化されていきます。最後に環境のデザイン。これはオフィスやワークツールのデザインといった、働く環境にアプローチする方法です。こうしてレイヤーに分けて整理すると、アプローチの仕方がわかりやすくなるのではないでしょうか」。

こうした組織文化の可視化やデザインの動きは、近年とても旺盛になっていると佐宗氏。具体的な事例としてNetflixの例を挙げて説明しました。

「シリコンバレーでは、Netflixの組織文化を物語としてまとめた “カルチャーデック”が注目を浴びました。いわゆるMVVから始まり、それがなぜ大事なのか、それがどのような行動につながっているのかがまとめられ、スライド形式になったものです」。

かのシェリル・サンドバーグに「シリコンバレーから生まれた最高のドキュメント」と言わしめたNetflixのカルチャーデック。

「カルチャーデックの制作を通じ、自分たちの組織文化を可視化し、物語として伝えることで、会社組織としての一体感を高めることができます。同時に、採用活動や共創の入口、ブランディングといった点での効果も期待され、近年はそうした活用方法も多く見られるようになりました」。

BIOTOPEではこの取り組みを自社でも展開。絵本風のカルチャーデックはとても読みやすく、万人に届き得る読み物として多くのユーザーの目に留まるようになりました。

BIOTOPEのカルチャーデック。全文はこちらで公開されている

エネファームの事例から見る、組織文化醸成の軌跡

組織文化についての多くが語られた前半のMonthlyMeetup。最後に焦点が当てられたのは、冒頭の説明にあった氷山モデルの一番上にある人為的創造物でした。佐宗氏は会場に対し、「皆さんは組織文化が何かと問われた際にパッと答えられますか?」と問いかけ、顕在化している組織文化について説明を始めます。

「先ほど説明した氷山モデルの最上部━人為的な創造物の部分━にフォーカスします。表面的に表れている組織文化をわかりやすく分けてみましょう。それぞれ『行動』『口癖』『英雄』『習慣』『評価』の5つに分けてみました。皆さんとって、これらは普段仕事をしている中で比較的振り返りやすいものだと思います」。

佐宗氏は、表層的な組織文化を5つに大別したのち、それぞれの具体例について他社の事例を挙げて紹介。どの要素もその企業の“らしさ”を形づくっている重要なポイントであり、突き詰められている印象を受けました。

5つの要素のうち、「英雄」の具体例
5つの要素のうち、「習慣」の具体例

5つの要素の具体が示されたあとは、実際に社内の事例として、パナソニックの一大プロジェクト「エネファーム」を取り上げ深掘りする時間に。同プロジェクトに携わっていた小原 英夫さんが登壇し、佐宗氏とディスカッションを行いました。

パナソニックホールディングスでエネファームのプロジェクトを担当した小原 英夫さん

冒頭、佐宗氏は小原さんが新たな組織の立ち上げから成長、そしてプロジェクトの成功までを見てきた、まさに今回のテーマの“語り手”であると紹介。それを受けた小原さんは、エネファームのプロジェクトについて次のように説明しました。

「エネファームとは、家庭用の燃料電池システムで、1つのエネルギー源から電力と熱を同時に発生させるコジェネレーションシステムを搭載した商品です。技術部門では1990年代後半から研究開発が進められていたものの、なかなか出口が見えずかなり難航していました。2000年に入ると、経産省主導で家庭用燃料電池の実証プロジェクトが始まり、同時期に我々のプロジェクトも研究開発から社会実装へとフェーズを進行。2009年にようやく一般販売まで進めることができました」。

組織文化が育まれた過程の事例に聞き入る参加者たち

小原さんは同プロジェクトについて、「成功と言えるかどうかはわからないが、一つの結実した事例として見てきた景色を語ることはできる」と述懐。プロジェクトチームにおける可視化された組織文化について振り返りました。

「先ほど佐宗さんのお話しにありました、5つの要素で組織文化を振り返ります。『行動』においてはとてもシンプルで、『諦めずにやり切る』が挙げられます。泥臭い言葉ですが、これが全てでした。エネファームはいくつかの要素が相互に関連して成立するシステムだったので、どこかの進化が遅れると全体に影響が出るんです。そのため、ボトルネックとなった部分(うまく機能しない要素)にはときに厳しい言葉が向けられていました」。

幾度となく危機を迎え、それぞれが背水の陣で臨んでいたエネファームのプロジェクト。関わったメンバーそれぞれの所属や専門性、価値観の違いはあれど、何としてでもやり切ろうとする鬼気迫る雰囲気があったそうです。

そんなチームにチャンスが訪れたのが2004年。首相公邸にエネファームを導入する大規模な実証実験でした。これをやり切ったチームは、ようやくここで形にできたという実感を得ることができました。

これまでの歩みを本音ベースで振り返る小原さん

「難しいプロジェクトでしたが、今になって振り返ってみると、チームだけでなくCTOやセンター長、技術リーダーといったレイヤーが、それぞれの役割を果たして下に指示を出せていたのが結実の大きな要因だったと思います」。

小原さんが話し終えたのち、じっと相槌を打ちながら話に耳を傾けていた佐宗氏が、「プロジェクトチームのレガシーとして、残していきたい文化はありますか」と質問。それに対し、小原さんは間髪入れずに「やりたいことが実現できる文化」だと即答しました。R&D部門として、会社の利益に資する部分と、個人のやりたい気持ちが重なる部分において、それが実現できる可能性と期待感が組織文化として残ってほしい。そう訴えて、ディスカッションを結びました。

他に代替されることのない組織文化

ワークショップは小グループで実施。同属性同士で集まり、グループを組んだ

講演とディスカッションを終え、プログラムは最後のワークショップへ。所属が同じ参加者同士で小グループを組み、実際に組織文化の可視化に挑みます。使用するのは佐宗氏が用意したオリジナルのワークシート。組織文化の顕在化している部分、『行動』『口癖』『英雄』『習慣』『評価』についての設問が用意されており、最初の15分間に個々人で取り組みました。

ワークショップで使用したオリジナルのワークシート。組織文化の5つの要素について設問が用意されている
黙々と書き出す参加者のグループ
同じ組織とはいえ、捉え方は人様々。チームメンバーが何を書いているのか、興味を持って観察する参加者も

15分間の個人ワークののち、書き出した5つの項目をチーム内で共有。それぞれの回答の差異を楽しみつつ、共通点を探してキーワードでまとめました。また、それらを生み出している環境要因や根底にある価値観、無意識の思い込みについても考察。互いに議論を交わし、ワークシートにまとめました。

チームごとに「らしさ」を考え合う時間。どのチームもなごやかな雰囲気で表情にも笑顔が見える

最後にチームの中でまとまった各組織“らしさ”を全体で共有。業種や会社の規模によって「安心安全」や「調和」、「意思決定の速さ」といった大事にしている価値観が異なり、ユニークな個性が見られました。

佐宗氏は発表後、本会の総まとめとしてダイアローグの時間を取り、参加者各位から感想をヒアリング。その一つ一つに耳を傾け、「ぜひ今日のような機会を今後もとって各々の組織らしさ、組織文化を磨き上げてほしい」と述べて、MonthlyMeetupを結びました。

テーマ「組織文化」についてたっぷりと学び、そして語り合った本会。これまで紡がれてきた歴史文化を紐解きつつ可視化するプロセスは、大掛かりな取り組みで難解に感じられました。しかし、実際のワークショップを通じて、わずかながらその糸口が掴めたように思います。画一化が進むAI時代において、他の何ものにも代替されることのない個性を持つ組織文化。それを形作るのは、これまでの歴史だけでなく、わたしたち一人一人の言動であることを忘れず、今後のアクションにつなげていきたいとの思いを強くした3月のMonthlyMeetupでした。

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