2026.03.03
イベントレポート

【1月EX Monthly Meeetupレポート】
経済性と社会性を両立する“ゼブラ企業”。
財務と金融の力で持続可能な繁栄を

新しい働き方 ウェルビーイング Monthly Meetup

自分の仕事は、はたして社会のためになっているのだろうか━━。

目の前の仕事が誰の幸せにつながっているのかがわからない。その先に豊かな未来社会を描けない。そんなとき、上記の問いが自身の中で鎌首をもたげる。自分の仕事に意義が見出せなくなり、モヤモヤを抱えつつも、日々の仕事になんとか折り合いをつけて取り組む。働く人なら誰しも、似たような経験をしているかもしれません。

18世紀後半に生まれ、今の社会を形作ってきた資本主義は、経済全体の成長と消費者の選択肢を豊かにしてきました。その一方で、無限の成長追求による環境破壊や貧富の格差拡大など、多くの歪みを生んできたのも事実です。昨今はそんな影響もあり、人々の価値観が大きく変容。ポスト資本主義の議論や脱成長社会といった考え方も生まれています。冒頭の問いは、まさにそうした背景があって人々が感じるようになったものでしょう。

資本主義社会おいて、経済性と社会性を両立することは可能なのか。三方良しのビジネスは理想論でしかないのか。この難題に取り組んでいるのが、2026年最初のMonthlyMeeetupで取り上げる「ゼブラ企業」です。

成長自体を目的・絶対視するのではなく、社会・個人としての持続的な繁栄を。ゼロサムではなくWin-Winを。競争ではなく共創を目指す。そんな新時代の企業に迫った2026年1月のMonthlyMeeetup。本稿では、当日の学びと交流の様子を、会場の熱量そのままにお伝えします。

イベント詳細

EX革新活動をするメンバー同士が活動を共に振返り、フィードバックをし合い、新たな学びの視点を持つことで、今後の活動を加速させることを目的として立ち上がった学びの共有の場。現在はより柔軟に形を変え、社内外の知見を組み合わせることで、新たな共創の形を生み出すことを目的とした、テーマ型のオムニバス形式の勉強交流会へと成長しています。

2026年1月度のテーマは「事業と社会課題解決を両立させるゼブラ(財務・非財務統合型)経営」。講演とオープンダイアローグを通して、さまざまな立場の参加者とともに、テーマについて思索を巡らせました。

これまでのMonthlyMeetup

登壇者紹介

陶山 祐司(すやま ゆうじ)

Zebras and Company共同創業者。東京大学倫理学卒業、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。経産省でエネルギー政策、電機産業政策を担当後、VC/新規事業コンサルとして、宇宙開発ベンチャーの100億円超の資金調達などを支援。2021年にZebras and Companyを共同創業。長期志向でステークホルダー全体へ貢献し、社会性と経済性を統合的にマネジメントするゼブラ経営の普及に尽力している。昨今では、ビジネス領域から範囲を広げ、特に非営利・行政・政治の経営の変革にフォーカスし取り組みながら、クロスセクターで領域横断的な協働を進めている。

社会的企業を応援する仕組みと「ゼブラ企業」との出会い

当日の会場の様子。穏やかな雰囲気の中でスタート

「実は新年の初回、楽しみにしているんです」。そんな声が昨年末から聞こえていた今回のMonthlyMeetup。未来の新しい働き方や共創、地方創生といった社会性の強いテーマを多く扱ってきた当イベントの参加者の中には、「ゼブラ」に熱視線を送るアンテナ感度の高い方も多くいらっしゃいました。

今回の登壇者は陶山 祐司さん。「ゼブラ企業を社会に実装する」をミッションに掲げるZebras and Companyの共同創業者である陶山さんの話に、会場の参加者一同大きな期待感を寄せていました。

冒頭、参加者の自己紹介が一巡した後、陶山さんが口火を切ります。

今回の登壇者であるZebras and Companyの共同創業者の陶山 祐司さん

「お金はもらえるけど、これって相手にとって良くないな、あるいは社会にとって良くないなと思う仕事っていっぱいあるじゃないですか。似たような話で、年収が高い仕事と社会的に意義がある仕事って、若干ズレがありますよね。こうした問題に対し、僕は明確な答えを提示するわけではなく、今ここにいるみなさんと対話しながら模索していきたいと思っています。僕自身がこの場で伝えられることには限界がある。そのため、今日はみなさんに考えるきっかけやヒントになるものを持って帰っていただければ幸いです」。

会場の一人ひとりの様子を観察しながら、静かな調子で語り始めた陶山さん。続けて、自身の現在に至るまでの軌跡について説明します。

幼い頃から野球一筋で生きてきて、20歳で挫折を味わった陶山さんは、酷い喪失感に苛まれていました。しかしそんな中にありながら、今まで野球ができていたことは周りの支援があったからこそだと気づき、恩返しをしていこうと決意します。

「野球をやめた頃から『自分はどう生きていけばいいか』、『社会はどうあるべきか』という二つの問いを抱え、東京大学で倫理学を学んだりしながらずっと考え続けてきました。たまたま良い出会いに恵まれて、卒業後は経済産業省に入省しましたが、自身の仕事のあり方、特にビジネスの経験が全くなくて産業政策の手触り感がなく、すごく悩んで4年半で辞めることになったんです」。

ゼブラ企業に出会うまでの来歴をていねいに説明する陶山さん

「一方で、経済産業省では多くの出会いにも恵まれましてベンチャーキャピタリストになりました。投資家からお金を預かり、新しいベンチャー企業に対して投資をする仕事に就きます。そこで出会ったのがispaceという宇宙開発企業でした。民間企業による月面開発を目指している会社で、同社が政府を巻き込んで100億円くらいのお金を集める過程の支援をしました。経産省の時には大企業と対面することが多かったのですが、自分自身が、創業したての企業が徐々に大きくなって世の中を動かすことに携わったという確かな手応えを感じることができたんです」。

経済産業省時代には、売上が数兆円にも上る大企業を相手に仕事しており、数十〜数百億円程度の事業規模の会社と付き合う機会も少なかった陶山さん。しかし、この経験を通して、もしかしたら当時のispaceのような小さな会社でも、一定の期間の中で人類に対してとても大きな貢献・インパクトを与えることができるかもしれないという可能性に気づきます。

「時間軸を踏まえて、ものごとがダイナミックに変わってくイメージが持てるかどうかが重要だと学びました。ただ、創業したての企業向けのベンチャーキャピタルは、投資した額のおおよそ30倍くらいのリターンを期待してるんですよ。かつ、できれば4~5年くらいの期間でリターンが返ってきて欲しいというイメージです。短期で急成長する企業しか応援できないというベンチャーキャピタルの実態に、とても問題意識を持ちました。本当に社会的意義があって、儲かる可能性のある事業でも、それを応援するって難しいんだなと感じました」。

これまで関わってきた領域を平面にまとめ、整理したもの

独立後は、社会的な企業への支援や地方創生に関わり、インパクト投資(財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出そうとする投資行動)の領域で活躍し始めます。また、加えてインパクト投資の普及にも務め、少しずつ社会にその意義を広げていきました。

そんな折、米国の西海岸で新しい動きが生まれます。4人の女性起業家たちが、社会課題の解決と経済成長(利益)を両立させる持続可能な経営のあり方である「ゼブラ企業」を提唱。その考えに共感した陶山さんは、仲間とともに、日本にもこの概念を輸入しようと2019年ごろから活動を始め、2021年にゼブラ企業への投資や経営支援を行うZebras and Companyを立ち上げました。

財務・金融の知見でゼブラ企業を支援

2017年の米国西海岸で、4人の女性起業家が提唱した概念である「ゼブラ企業」。その背景には、短期的成果から長期的持続性へ、株主至上主義からステークホルダー主義へ、そして財務から社会的インパクトの包摂へと移行する社会的な動きがありました。現在でもその勢いはとどまることを知らず、ブログをきっかけにコミュニティは20,000名以上に拡⼤。アメリカ、ドイツ、イギリス、シンガポール、オーストラリア、⽇本など世界で30以上のローカルチャプターが存在しています。

ゼブラ企業とは何かをシンプルに説明

Zebras and Companyが挙げるゼブラ企業の特徴として、以下の3つがあります。

  • 社会性と経済性の両方を追求するとともに、相利共生(集団・群れとしての共存)を大切にしている
  • 社会的な認知度・理解の向上が必要な「社会的に複雑な」課題に挑戦している
  • 既存の金融の仕組みにマッチせず、新たなお金の流れを求めている

こうした企業群は、先述の通り既存のVCではなかなか支援が難しく、新しい仕組みが必要とされていました。

ゼブラ企業への投資は新しい考え方、仕組みのもとで行われる必要がある

そこで立ち上がったのが、陶山さんが共同創業したZebras and Companyです。陶山さんはこれまでのキャリアで磨いてきたインパクト投資を用い、ゼブラ企業への投資や経営支援を行ってきました。

Zebras and Companyが紹介するゼブラ企業のひとつ、「陽と人」

「インパクト投資とは、経済的リターンだけに限らず、社会的インパクト(社会や環境に対して与える影響)を可視化し、それも踏まえて投資をすることです。社会的インパクトを可視化するためには、どんなインパクトを出そうとしているのかを整理する必要があります。そして実際に事業に取り組んで、振り返って確認して報告する。このPDCAをしっかり回そうというのがインパクトマネジメントと呼ばれているものです」。

陶山さんが取り組んできたインパクト投資
社会的な影響を可視化したり定量化することで、PDCAを適切に回すことができる

社会課題の解決が必要だ。ならばそれをビジネスでやってみよう。それを応援する具体的なやり方がインパクトマネジメントである。陶山さんはこれらを「一見難しい概念だが言っていることは同じ」と話します。

「つまり、インパクトマネジメントとはお金とそれ以外のもの、財務と非財務を全体的に可視化して、経営・マネジメントしていきましょうって話なんです。僕は、こうした考え方を用いて社会課題解決ができるんじゃないかと考え、また、金融・財務・経理の知見も組み合わせることでそうした活動が加速すると思っています」。

自身の専門性を活かし、ゼブラ企業の支援を続けていきたいと語った陶山さん。最後に、「自社に関わるところや自分たちの持っているものからだけではなく、社会側の視点に立って、社会にとって必要なものに対して経営をする企業が増えてほしい」と願いを述べ、次のように締めくくりました。

専門性の高い話だけでなく、自身の想いや熱量も併せて語る陶山さん

「ゼブラの考え方は個人にも言えると思っています。先日母校の学生のインタビューを受けてきた際、その学生さんは僕の話を面白がってくれて、視野が広がったと言ってくれました。でも、これって1円にもならないんですよ。じゃあ価値が無いかと問われればそうじゃない。その子の人生、ひいては社会にちょっとした変化を起こしている。こうしたことを日々みなさんもされていると思うんです。それを可視化して、意識して、より改善していこうというのが、僕のやっていきたいことなんです」。

従業員の社会への影響を可視化・評価するインパクトマネジメント

陶山さんの講演ののち、プログラムはオープンダイアローグへ。参加者同士がペアを組み、話を聞いて感じたことをありのままに伝え合いました。

一般論や経験論ではなく、ありのまま感じたことを話すオープンダイアローグ。参加者たちの表情はとても明るい

感想のシェアが終わった後、休憩を挟んで後半パートへ。サークルの中に陶山さんが加わり、参加者の疑問や質問に答えていきました。

参加者の声にメモを執りながら真剣に耳を傾ける陶山さん

特に印象的だった対話は2つ。1つめは、「インパクトマネジメントと統合報告書」。統合報告書とは、企業の財務情報と非財務情報を統合し、中長期的な価値創造ストーリーを投資家やステークホルダーに伝える報告書のことです。専門的な内容の話にはなりますが、財務に興味関心の強い参加者が質問し、対話が白熱していました。

「講演で申し上げたとおり、統合報告書の非財務の部分、つまりインパクトの部分については、何を数値化して可視化するかが大事になります。人間は数字にしたものをコントロールしようとする習性があるため、何を指標化するかが極めて重要なんですね。その点において、現金の増減のみを見る単式簿記ではなく、資産状況の変化が見られる複式簿記の考え方を用いることが必要です。また、ヨーロッパやアメリカでは社会制度や税制、金融のあり方にストック(蓄積)の視点が組み込まれて設計されている一方で、日本はフロー(一定期間の動き)の視点に偏っています」。

全体の場で対話が行われることで、個人の疑問が学びに変わり、さらに全体にシェアされて集合知へと昇華されてゆく

印象に残った2つめの対話は、「資本主義の仕組みの中でもやれることがある」といった、現代社会に希望を持てるお話でした。

社会の歪みについて語られるとき、どうしても根幹にある資本主義が良くないといった話に飛躍しがちなのですが、ここは冷静に議論が行われます。まずCTOの小川さんから、株式会社の起こりについて、「資本と経営を分離し、有限責任で大きな資金を集めて社会に良い行いをするための発明だった」との言及がありました。しかし、一方で株価が自己目的化し、実体経済の10倍以上の信用経済が形成され、短期のお金を求める状況になっている点も併せて指摘。株式会社の陰陽の両面が整理されました。

これに対し、陶山さんは「どのように良い循環をつくっていけるかを考え、工夫すれば、現在の資本主義の仕組みの中でもできることはある」とその可能性を指摘します。

「僕が特に可能性を感じているのは投資家に見せるためのインパクトマネジメントではなく、従業員や経営者にとって納得感のあるインパクトマネジメントです。働く人が、自分たちのやっていることには意味があるんだ、こうして世の中に繋がっているんだと思えることは、とても意味のあることだと思っています。特に経営者は、お金のためだけではなく、もちろん人生をかけて事業に取り組んでいるわけですよ。それがどう社会に影響しているのかを知るのは、本人にとっても社会においてもとても大事なことですよね」。

全体の場で対話が行われることで、個人の疑問が学びに変わり、さらに全体にシェアされて集合知へと昇華されてゆく

世の中にある仕事、その全てが経済資本の尺度で測れるわけではありません。働く人一人ひとりの社会への好影響が可視化され、評価することができれば、もしかすると貨幣経済の中で生まれた歪みも少しずつ改善されるかもしれません。ゼブラ企業とその支援のお話を通じ、未来社会に明るい希望を持つことができた1月のMonthlyMeeetupでした。

記事の内容は公開時のものです。
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