Interview 空気中にある見えないものをつかまえる

空気中にある見えないものをつかまえる

研究成果が社会実装されるところが見たい

「さまざまな分野での応用を目指すために、他にはないものを作っていきたい」と語る池内江美奈研究員。大学での専門は農学で、生活習慣病改善のための分子メカニズムを3年研究していた。研究が商品に直結するという世界を見たいという理由で、大学には残らなかった池内。「人の健康に貢献できるモノづくりがしたい」と考え、パナソニックに入社した。
周囲は、医薬品、食品、医療機器といった分野に進んでいく傾向にある中、「人と違うことがしてみたい」という理由で、周囲ではめずらしい電気メーカーへと進む。「モノづくりに農学系。今までとは全く違う研究ができる」と未知の分野に胸を踊らせていたという。

インタビュー風景

空気中にある「見えないもの」を「見える化」

最初に配属された部署では、皮下埋込型の血糖計を担当。定期的に血糖値を調べるセンサが体についているので、わざわざ病院に足を運ばなくても、手軽に数字を把握することができるものを作ることを目指していた。実際には製品化には至らなかったものの、技術的には他の製品に繋いでいくことができたという。その後、現在も続いているウイルスを検出するバイオセンサの研究を担当することになる。
ウイルスと聞くと、病院というイメージが浮かびがちだが、普通の環境で使えるものを作りたいと考えている。空気中にある「見えないもの」を「見える化」することで、未然に防げるものがたくさんあり、応用度は高いからだ。エボラの拡大のような悲惨な状況や、花粉などさまざまなアレルギーに悩む人も多い現状で、空気中の見えないものが見えたら未然に防ぐことができる。困っている人の悩みを解消し、より良い生活が送れる環境づくりに役立ちたいと話す。

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材料の安定化が成功の鍵

現在の研究では抗体を扱っている池内だが、農学の出身でも、抗体も材料も扱い始めたのは会社に入ってからだという。工学という未知の世界で、有名な先生のもとで学びながら研究ができる環境は魅力的だと話す。
現在の取り組みでもっとも難しいと感じているのは「材料の安定性」だという。いわゆる「なまもの」は温度変化や環境に左右されやすいからだ。材料の安定化を測るため、素材探索から、改善まですべてに携わり、研究に繋げている。センサという点で考えると、材料と検出技術の融合が大事だと話す池内。センサになったとしても、どういう形で広げていくのかは、ユーザに届けるまでのノウハウが抜群にあるパナソニックでないと実現できないと強調する。
さまざまな専門分野の研究員と関わり、現在も日々勉強で、刺激されることも多いのだそう。自分では考えられない突飛な発想がある人はすごいと感じると同時に、研究者にとって大切なことは、地道にコツコツの積み重ねであるとも話す。
現在の研究は、「水の次は空気をビジネスにしたらいいのでは?」というアイデアからはじまったという。感染していくものは、とばりがない空気中を流れていく。防御するためには「見える化しよう!」という流れである。センサだけでも人間に検知できない感覚を“超えたもの”がわかるようになり、できなかったことができるようになるのだ。

今後は、材料の安定化を目指し、いつでもどこでもセンシングできるようにしたい、と語る池内。また、パナソニックが抗体を扱っていることが学生にはあまり知られていないことを残念とも感じている。外部との繋がりこそ、パナソニックの強み。アカデミックな研究者との共同研究はもちろんのこと、情報交換というライトなレベルでも、学生も含めてもっと積極的に関わっていきたいと意気込みを語った。

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池内 江美奈

テクノロジーイノベーション本部
専門:分子生物学、抗体工学【博士(工学)】